ブックタイトル処方Q&A 糖尿病

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概要

処方Q&A 糖尿病

第1 章 糖尿病治療の進め方?15したが,最近は優れた経口血糖降下薬が出てきましたので,インスリンもさまざまな治療薬の選択肢の1つという位置付けとなっています.とはいっても,インスリン注射に対しては,患者だけでなく医療者側にも精神的障壁があり,できれば使わずに治療したいというのが本音でしょう.一般的な相対的適応は表に示したとおりです.しかし,2型糖尿病で経口血糖降下薬を使用してもコントロールできないからといって,インスリンを使えば必ず血糖がコントロールできるというわけではありません.特に,食べ過ぎが血糖コントロール困難の主たる原因の場合は,インスリンを使用しても体重が増えるばかりで,血糖をコントロールするのは難しいでしょう.食事や運動などの適切な改善が行われていない限り,インスリンを含め,どのような薬物療法も無効と考えるべきです.そのことを前提とした上で,さらにインスリンを使用するかどうか,患者に合わせた治療薬を十分に検討する必要があります.まず検討すべきことはインスリン抵抗性です.メタボリックシンドロームの患者の場合は,インスリンを使うにしても,まずインスリン抵抗性を改善する薬が有効なことがあります.通常はビグアナイド薬が基本で,さらにチアゾリジン薬を使用します.次にインスリン分泌能を検討します.多くの患者はインスリンが相対的に不足しています.インスリン分泌能が軽度の場合は,スルホニル尿素薬(SU薬)や速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)のように直接膵β細胞のインスリン分泌を刺激するのではなく,比較的マイルドなインクレチンを介するDPP-4阻害薬を使用し,さらにα-グルコシダーゼ阻害薬と併用すると極めて有効な場合があります.さらに少量のSU薬やグリニド薬を加えてもコントロールできない場合には,インスリン不足がかなり大きいと考えて,インスリンの使用を検討する必要があります.SGLT2阻害薬の位置付けについてはまだ確定していませんので,ケースによって併用していくことになります.腎機能が悪化した患者では,使える経口血糖降下薬が少ないので,どうしてもインスリンを使用しなければならない機会が増えます.インスリンの使用法としては,持効型インスリンを経口血糖降下薬に加えて1日1回だけ使うBOT(basal supported oral therapy)がよく使われた時期もありましたが,最近は下火のようです.むしろ最近は,入院してインスリンを1日4回注射するインスリン強化療法を行い,徹底的に血糖を下げて一度糖毒性を解除すると,経口血糖降下薬が非常に効くようになり,インスリンを離脱できることがわかってきました.このような状況を考えながら,インスリンの導入時期を検討することになります.(江本直也)