ブックタイトル処方Q&A 糖尿病

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概要

処方Q&A 糖尿病

203第6 章 糖尿病の治療を行う上での注意点?空腹時血糖も高い症例(図1 B)空腹時血糖値が高い肥満症例には,ビグアナイド薬,チアゾリジン薬が第一選択となりますが,特に前者は,体重増加作用が少なく,腎機能正常の場合には第一選択とされることが多くなっています.DPP-4阻害薬も空腹時血糖を下げる効果も有するので使用可能ですが,あまり空腹時血糖が高い場合には,すぐに他剤と併用する場合が多くなりますので,ある程度血糖が改善した後に使用した方が効果的です.肥満のない症例,インスリン分泌の低下が推測される症例では,スルホニル尿素薬(SU薬)が第一選択となりますが,急に血糖が下がる場合や,体重増加がみられる場合,DPP-4阻害薬との併用による低血糖が生じる場合を考慮することが大切です.なお,SU薬は少量から使用します(グリメピリドで0.5mgくらいから).DPP-4阻害薬とSU薬を併用することで,インスリン分泌作用が増強され,強い血糖降下作用が期待できますが,逆に,予想以上の血糖降下作用を示すことがあるため,それらを併用する際は,「適正使用に関する委員会」の勧告2)に従い,SU薬を減量することが大切です.また,SU薬にて血糖値改善後,たとえばDPP-4阻害薬に変更することにより良好な血糖が得られることもよく経験します.SGLT2 阻害薬SGLT2阻害薬は,インスリンを含めたどの糖尿病治療薬とも併用可能ですが,その作用機序から,尿路感染症や脱水といった副作用が危惧されており,現時点では推奨される対象は限られていると言えます.エビデンスは明確にされておりませんが,体重減少効果が注目されており,肥満のある比較的若年男性への使用は有意義である可能性があります.各薬剤との併用によるHbA1cの低下を図2に示します.併用薬によらず血糖降下作用,体重減少作用があることが示されています.SGLT2阻害薬の使用にて,肝での糖新生亢進や血中グルカゴン濃度の上昇も報告されています3, 4).よって,糖新生抑制作用のあるメトホルミンや,グルカゴン抑制作用のあるDPP-4阻害薬で,理論的には効果的に血糖値が下がる可能性がありますが,逆に低血糖なども懸念されることになります.また,SGLT2阻害薬服用にて軽度の脱水頃向が報告されていますので,メトホルミンとの併用時には十分な注意が必要です.(田島加奈子/橋本尚武)図2 SGLT2阻害薬のHbA1cに対する効果イプラグリフロジン国内長期併用試験結果より(52週)ビグアナイド薬チアゾリジン薬α-グルコシダーゼDPP-4 阻害薬 阻害薬速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)スルホニル尿素薬(SU薬)〈SGLT2阻害薬併用時のHbA1cの低下〉 -0.95%〈SGLT2阻害薬併用時の体重の低下〉 -3.16kg -0.81% -2.70kg -0.74% -2.31kg -0.82% -2.78kg -0.75% -2.41kg -0.84% -2.34kg 文献1) 日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2014-2015,文光堂,2014.2) 日本糖尿病協会:インクレチンとSU薬の適正使用について,2010.3) Ferrannini E, et al : Metabolic response to sodiumglucosecotransporter 2 inhibition in type2 diabetes.J Clin Invest, 124 : 499-508, 2014.4) Merovci A, et al : Dapagliflozin improves muscle insulinsensitivity but enhances endogenous glucoseproduction. J Clin Invest, 124 : 509-514, 2014.