ブックタイトルアルゴリズムで考える 薬剤師の臨床判断

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概要

アルゴリズムで考える 薬剤師の臨床判断

基本的な症候を示す疾患 頭痛をきたす疾患は,基礎疾患のない一次性頭痛とほかの疾患に起因する二次性頭痛に大別され,両者の見極めが患者の判断において重要である.一次性頭痛の患者が多いが,二次性頭痛には見逃してはならない緊急性の高い,あるいは重症度の高い器質的疾患が多く含まれている(表1,2).発生頻度の高い疾患1. 一次性頭痛 ● 片頭痛:発作反復性の拍動性(ズキズキ)頭痛で,片側性は60%,両側性も少なくない.中等~重度の頭痛が4~72時間持続し,悪心・嘔吐,光・音・臭いに過敏などの随伴症状がある.動作で増強するため,横になっていることが多く,日常生活に支障が出る.閃輝暗点(チカチカ),視野欠損などの前兆は20%程度に認められる.緊張型頭痛との合併も多い. 若年(10代)発症,女性に多く,40%以上に家族歴が認められる.ストレス・過労,寝不足・寝過ぎ,人ごみ,特定の食物(アルコールなど),天候の変化,月経など,さまざまな誘因がある. ● 緊張型頭痛:頭痛の中で最も多い.両側の後頭・後頸部,前頭部あるいは頭全体が締め付けられるような軽~中等度の頭痛で,日常生活は阻害されない.午後に増強し,しばしば肩こりを伴うが,悪心・嘔吐はない.中年以降に多く,運動不足,ストレス,頭頸部の姿勢異常などが関与する. ●群発頭痛:一次性頭痛では最も少ない.1日に1~2回,15分~3時間持続する,片側性の眼球部をえぐられるような激しい頭痛が,数日~数週間にわたり継続(群発)する.強い痛みのためじっとすることができず歩き回る.結膜充血,流涙,発汗,眼裂狭小(ホルネル徴候)を伴う.男性に多く,アルコールにより誘発される.2. 感染性疾患 ● 風邪症候群・インフルエンザ:感冒症状とともに側頭部~頭部全体に頭重感,締め付けられるようなズキズキした痛みが徐々に出現する.頭痛は数時間~数日程度続くが軽~中等度である.風邪症候群では鼻閉,鼻汁,咳,咽頭痛,インフルエンザでは38~40℃の高熱,筋肉痛,関節痛などの全身症状がみられる. ● 細菌性副鼻腔炎:多くは感冒改善後に発症する.副鼻腔の相当部位(前頭洞は前頭部,上額洞は頬部)の自発痛,叩打痛,圧迫感があり,前傾姿勢で増悪する.鼻閉,鼻汁を伴う.深部にある篩骨洞,蝶形骨洞の炎症では,頭頂部,後頭部の痛みを訴えることもある.3. 物質摂取または中止による疾患 ● 薬物乱用頭痛:頭痛薬や鎮痛薬を服用しているのに毎日のように頭が痛い,という患者では薬物乱用頭痛を疑う.診断基準では,「月に15日以上の頭痛,薬物を3ヵ月以上乱用(エルゴタミン,トリプタン,オピオイド,複合鎮痛薬は10日/月以上,単一成分の鎮痛薬は15日/月以上),頭痛は薬物乱用のある間に出現もしくは著明に悪化」とされている.一般人口の約1%と頻度が高く,もともと片頭痛や緊張型頭痛があり薬物を開始した患者が多い.トリプタンの乱用では片頭痛=拍動性頭痛の頻度が増加し,鎮痛薬の乱用では圧迫されるような頭痛が特徴である.薬剤師に理解と対応が重要であり,頭痛患者に対しては常に念頭におくべき疾患である.表1 頭痛を生じる代表的な疾患分類疾患一次性頭痛片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛二次性頭痛頭部外傷切創,皮下血腫,骨折,急性硬膜下血腫,急性硬膜外血腫,慢性硬膜下血腫血管障害くも膜下出血,脳内出血,脳梗塞,脳動静脈奇形破裂,側頭動脈炎,動脈解離,静脈洞血栓症その他の頭蓋内疾患脳腫瘍,水頭症,低髄液圧,てんかん物質摂取または中止グルタミン酸,アルコール,カフェイン離脱,亜硝酸塩,薬物乱用(鎮痛薬,トリプタン系,エルゴタミンなど),CO中毒感染症髄膜炎,脳炎,脳膿瘍,風邪症候群,全身性細菌・ウイルス感染症恒常性障害高血圧脳症,低酸素(睡眠時無呼吸性頭痛,高山病),低血糖,透析顔面・頭蓋骨の疾患急性緑内障発作,屈折異常,副鼻腔炎,中耳炎など耳疾患,顎関節症精神疾患うつ病,神経症性障害神経痛・顔面痛頭部神経痛など三叉神経痛,舌咽神経痛,後頭神経痛,帯状疱疹よくある疾患見逃してはいけない緊急性の高い疾患・片頭痛・緊張型頭痛・副鼻腔炎・薬物乱用頭痛・外傷・うつ病・神経症性障害・くも膜下出血,脳出血・髄膜炎・脳炎・高血圧脳症・内頸動脈・椎骨動脈解離・急性緑内障発作・側頭動脈炎表2 頭痛を生じる頻度の高い疾患と見逃してはいけない緊急性の高い疾患の代表例30 312頭痛