ブックタイトル処方Q&A100 呼吸器疾患

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処方Q&A100 呼吸器疾患

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処方Q&A100 呼吸器疾患

66 67気管支喘息?23 気管支喘息にLTRAを使用する意義や使い分けはありますか?ロイコトリエンとはロイコトリエン(LT)はアラキドン酸から生成される脂質メディエーターです.白血球が活性化すると,細胞膜のリン脂質からアラキドン酸が放出され,5?リポキシゲナーゼの酵素作用によりLTA4が生成されます.好中球や単球ではLTA4が加水分解されてLTB4に変換されますが,システイニルLT(CysLT)合成酵素を有する肥満細胞では,LTA4 はLTC4 に合成されます.気道平滑筋細胞にはCysLT1受容体が存在し,LTC4がCysLT1 受容体に結合することで気道収縮が生じ,微小血管の血管透過性が亢進します.また,肥満細胞や好酸球,内皮細胞にもCysLT1 受容体が存在し,LTC4 により炎症カスケードが進みます.ロイコトリエン受容体拮抗薬の位置づけLTC4,LTD4,LTE4はCysLTsと称され,受容体としてCysLT1,LT2,LT3 受容体があります.現在上市されているロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)はCysLT1 受容体の拮抗薬で,プランルカスト(オノン?),モンテルカスト(シングレア?,キプレス?),ザフィルルカスト(アコレート?)の3種類があります.LTRAは気管支拡張作用と抗炎症作用をもち,喘息症状,呼吸機能,気道過敏性,気道炎症,喘息増悪回数および患者のQOLを有意に改善します.LTRAは,単剤で投与すると低用量吸入ステロイド薬(ICS)の効果に劣りますが,中用量のICSを使っていても喘息が完全にコントロールされない症例では,LTRAを追加投与するとICSを倍量にした場合と同等の効果が得られ,ICSへの併用薬として有用です.長時間作用性β2 刺激薬(LABA)と比較した場合,増悪予防効果はほぼ同等ですが,症状や呼吸機能の改善度についてはやや劣ります.厳密な二重盲検無作為化対照試験の結果に基づくと,ガイドラインで提唱されているように,LTRAはICSへの併用薬としてLABAの次に選択されるべきです1).ただし,実地臨床に近いデザインの試験によると,LTRAは第1選択薬としてICSと追加併用薬としてもLABAにほとんど劣らないとする報告もあり2),動悸・振戦などでLABAの併用が困難な例や吸入薬の導入が困難な例では,LTRAを優先しても大きな不利益はないと思われます.また,アレルギー性鼻炎合併喘息,運動誘発喘息,アスピリン喘息患者の長期管理にはLTRAの併用が有用です.さらに夜間に症状がある喘息例では末梢気道に病変が残存していることが多いので,血液循環を通るLTRAを併用することで末梢気道の拡張効果,抗炎症効果が期待されます.3週間以上咳嗽のみが続く咳喘息例においても,LTRAの有効性が示されています.咳喘息治療の詳細は別項(Q30)を参照してください.One airway, One diseaseにおけるLTRAの有用性鼻粘膜は血管が豊富であるのに対して,下気道には平滑筋が存在するという相違はあるものの,上下気道には組織学的,免疫学的に共通点が多く(図1),アレルギー性鼻炎と喘息の合併例が多く存在することから,近年One airway, One diseaseという概念が広く知られるようになってきました3).鼻炎合併喘息例では,鼻炎増悪時に喘息も増悪しやすいことから,喘息コントロールのためにはアレルギー性鼻炎のコントロールが必要です.CysLTはアレルギー性鼻炎・喘息の両方の病態に関与するので,アレルギー性鼻炎合併喘息例には,アレルギー性鼻炎にも保険適用のあるオノン?,シングレア?,キプレス?が有用です.シングレア?,キプレス?が就眠前1回投与に対して,オノン?は1日2回投与ですが,患者の薬剤アドヒアランスに合わせて使い分ければよいでしょう.安全性については,アコレート?に関して重篤な肝障害が報告されていますが,他は比較的安全に使用できます.一時LTRAがChurg-Strauss症候群発症の一因となりうると報告されましたが,明らかな因果関係は証明されていません.LTRAによる抗炎症作用が内服ステロイドの減量を可能にし,結果としてChurg-Strauss症候群が顕在化したと考えられています.(松本久子) 文献1) 日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会:喘息予防・管理ガイドライン2012.協和企画,2012.2) Price D, et al : Leukotriene antagonists as first-lineor add-on asthma-controller therapy. N Engl J Med,364(18): 1695-1707, 2011.3) Bousquet J, et al : Links between rhinitis andasthma. Allergy, 58(8): 691-706, 2003.図1 上下気道の相違点と共通点鼻粘膜は血管が豊富であるのに対して,下気道には平滑筋が存在するという相違はあるが,上下気道には組織学的,免疫学的に共通点が多い.ロイコトリエンなどの炎症性メディエーターは,アレルギー性鼻炎,喘息の両者に関与する.(文献3)より引用)上皮気管支粘膜鼻粘膜上皮好酸球肥満細胞肥満細胞好酸球マクロファージマクロファージ好中球リンパ球リンパ球ロイコトリエンヒスタミンインターロイキン-4,-5,-13など平滑筋血管