ブックタイトル処方Q&A100 呼吸器疾患

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処方Q&A100 呼吸器疾患

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処方Q&A100 呼吸器疾患

4 5呼吸器一般?ので,以下は病態別に解説します.a 上気道疾患上気道疾患は米国(ACCP)では「上気道咳症候群」の名称で統一されました.上気道咳症候群は,主に鼻炎・副鼻腔炎による後鼻漏で誘発される咳嗽ですが,実際臨床の現場では後鼻漏を確認することが困難なので,後鼻漏と診断ができなくても上気道への治療介入で改善したものを総称します.後鼻漏の診断は自覚症状では20%未満,耳鼻科医の視診でも40%未満,咽頭塗沫検査の細胞数増加まで含めても60%未満の診断率とされています.特に鼻炎・副鼻腔炎の頻度の多いわが国では,常に上気道疾患による咳の可能性を念頭に置くべきであり,仮に耳鼻科医師が診察上は正常であると診断しても,40%以上の患者は診断されていないことを考慮すべきです.その場合は耳鼻科医師と連携して,上気道疾患にも有効であるヒスタミンH1 受容体拮抗薬を使用するか,ステロイド点鼻薬を使用して咳の改善効果を評価することが適切な判断です.b アレルギー性疾患アレルギー性疾患には,気管支喘息/咳喘息とアトピー咳嗽が含まれます.咳喘息は近年注目されている病態で,実際臨床では非常に多い疾患と考えられています.気管支喘息と咳喘息の関係は,① 咳喘息は気管支喘息の早期病変である,② 咳喘息は気流制限の弱い気管支喘息の亜型である,③ 咳喘息は気管支喘息の日内変動の咳優位時期を見ている,④咳喘息でも喘鳴は発生しているが,聴診器で聴取できない音域にあるだけである,などの諸説がありますが,喘鳴がなくても喘息同様の気道過敏性が亢進した状態を考慮すべきであり,気管支拡張薬が有効な症例があると判明したことは非常に意義があります.しかしながら,急激に咳喘息の概念が普及した弊害として,「長引く咳を見たら咳喘息を考えればよい」という一般臨床医が増えた結果,安易な気管支拡張薬の使用例が増えたという問題も発生しています.気管支拡張薬は副作用が強く,特に経口β2 刺激薬は最初に選択する薬剤としては問題があります.咳喘息の簡易診断基準では,気管支拡張薬で咳発作が消失することとなっていますが,気管支拡張薬の種類が限定されていないことで混乱があるようです.原則は吸入β2刺激薬〔サルブタモール(サルタノール?)・プロカテロール(メプチン?)〕を用いることで,短期間で確実に診断が可能となります.経口β2刺激薬や貼付型β2 刺激薬は,効果発現が遅く,気管支拡張効果が不定で,動悸・振戦などの副作用の持続時間が長いなどの問題があり,推奨できません.咳喘息の治療は気管支喘息と同様で,吸入長時間作用性気管支拡張薬/吸入ステロイド薬合剤,または併用を使用すべきです.気管支喘息では,β2刺激薬単独使用で予後が悪化することが判明しており,各種ガイドラインで必ず吸入ステロイド薬を併用すべきと明記されています.ただし,咳喘息では数年をめどに治療を一時中止することも可能とされています.アトピー咳嗽はわが国の藤村らが提唱した画期的な概念で,この概念がなければ原因不明の咳嗽の頻度が増えたと思われます.アトピー咳嗽の簡易診断基準は,アトピー素因を有する患者で気管支拡張薬が無効,ヒスタミンH1受容体拮抗薬で咳発作が消失するというものです.アトピー咳嗽の病態は咳受容体感受性の亢進(咳閾値の低下)であり,気道過敏性は正常範囲とされます.表2に気管支喘息/咳喘息とアトピー咳嗽の病態所見のまとめを示します.処方の考え方は,気管支喘息/咳喘息の基本病態は気道過敏性亢進なので,吸入気管支拡張薬/吸入ステロイド薬を使用し,アトピー咳嗽の基本病態は咳受容体感受性亢進なので,ヒスタミンH1受容体拮抗薬を使用すると考えると簡単です(図2).アトピー咳嗽に有効なヒスタミンH1受容体拮抗薬の薬剤の種類による効果の差は判明していません.論文化されているものの多くは,発売時期の古い薬剤であり,impaired-performanceなどの副作用も強い傾向にあります.実際には2000年以降に発売されたフェキソフェナジン(アレグラ?)・ロラタジン(クラリチン?)・レボセチリジン(ザイザル?)などの眠気の少ない新世代H1受容体拮抗薬の使用が推奨されますが,アレルギー性鼻炎や蕁麻疹などの保険適応症しか認められていませんので,服薬指導時には注意を要します.c 感染性疾患感染性疾患には,マイコプラズマやクラミジアなどの非定型感染症や百日咳の遷延期と,普通感冒などのウイルス感染症も含む感染後遷延性咳嗽が含まれます.遷延性咳嗽の気管支喘息咳喘息アトピー咳嗽病理学的所見中枢気道~末梢気道の好酸球性気道炎症中枢気道~末梢気道の好酸球性気道炎症中枢気道の好酸球性気道炎症生理学的所見気道過敏性亢進咳受容体感受性正常気道過敏性亢進咳受容体感受性正常気道過敏性正常咳受容体感受性亢進咳嗽発生の機序気管支平滑筋収縮を介する軽度の気管支平滑筋収縮によるAδ線維の刺激咳受容体感受性亢進に基づく診断のための咳嗽症状の必要性不要必要必要主な治療薬剤吸入ステロイド薬吸入長時間作用性気管支拡張薬吸入ステロイド薬吸入長時間作用性気管支拡張薬ヒスタミンH1受容体拮抗薬経口ステロイド薬(文献1)を一部改変して引用)表2 好酸球性気道疾患の病態図1 遷延性咳嗽の病態別による分類その他の併存原因・胃食道逆流症・喫煙/大気汚染など・微小誤嚥・習慣性咳払い下気道アレルギー・気管支喘息・咳喘息・アトピー咳嗽上気道咳症候群・後鼻漏咳嗽・アレルギー性鼻炎 ・慢性副鼻腔炎感染後咳嗽・マイコプラズマ 感染症・肺炎クラミジア 感染症・百日咳(遷延期)・感染後遷延性咳嗽