ブックタイトル高齢者保健福祉マニュアル
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高齢者保健福祉マニュアル
1168-3-3 終末期に出現しやすい症状感染症概要● 肺炎は高齢者の死因の上位であるとともに,認知症高齢者の主要死因としても知られている.誤嚥性肺炎は誤嚥のみならず,不顕性誤嚥によっても起こり,寝たきり状態では沈下性肺炎のリスクも高まる.尿路感染や褥瘡部の感染を起こす場合もある.これらの徴候として体温を継続的に測定することは重要である口腔ケア● 終末期には,水分や食事の摂取量が減り,これに伴い唾液分泌も減少する.加えて,開口したままの呼吸となるため,口唇や口腔内の乾燥がいっそう顕著になる.また,口腔ケアへの協力も得られにくく,開口も小さくなるため,口腔ケアがおろそかになりがちである● スポンジブラシやガーゼなどの軟らかい素材を用いた,歯・口腔粘膜の清掃,加湿剤・保湿剤による口腔粘膜や口唇のケアを実施する.口腔粘膜の乾燥予防は,円滑な摂食嚥下にも有効である排泄ケア● 治療上(たとえば,尿閉や褥瘡の治療など),あるいは介護負担軽減の目的から膀胱留置カテーテルが用いられることがあるが,尿路感染を招く場合もあるので,その管理は慎重に行うべきである● オムツ使用者の場合には,毎朝,あるいは排便による汚染時に適宜,陰部洗浄を行い,尿路感染を防ぐ嚥下障害概要● 嚥下困難は肺炎や窒息など,死に直結する事態を引き起こすばかりでなく,度重なるむせや咳き込みによって,高齢者に食べることへの苦痛や疲労感を与えることもある● 終末期にあっても食べることが生命と生活のリズムを保つエネルギーの源であることに変わりはない.終末期よりも前の段階から摂食嚥下機能の維持を図る取り組み(たとえば,嚥下体操や口腔ケアの励行など)を継続し,死の近い時期まで“食べる”機能を失わずにおきたい食品の性状と形態● 大きさよりも“のどごし”のよさ,食塊のまとめやすさがポイントとなる●ゼリーや裏ごし,舌でつぶせるぐらいまで煮るなどにより,適度にとろみをもたせた食品のほうが嚥下しやすい.口の中でバラバラする食べ物(かまぼこなど)やべったりと貼りつくもの(わかめなど),逆にサラサラして水のようにスッと咽喉を通るものはむせやすい人には不向きである食事姿勢● 上半身を起こすことで,咽頭部での食物の停滞を防ぐ.ギャッチアップ,いす座位のいずれでも,頭部が後ろにのけぞるような過度に伸展した姿勢だと,気道に食物が流れ込みやすく,誤嚥してしまう● 頭部がやや前傾し,頸部が軽度屈曲している姿勢にするとよい食事の目的● 食べることの目的が,栄養補給よりも“楽しみ”のほうが大きくなる時期がある● 終末期の進行プロセスをみながら,食べる目的をどこにおくのか,本人・家族,チーム内で検討する胃ろう● 脳血管疾患によって嚥下障害が発生した人に胃ろうを造設することで,栄養状態が改善し,結果,機能回復訓練が進むことは多くあり,また神経難病の患者らにも有効な栄養摂取法である.しかし,すでに終末期にあると判断されて以降に,高齢者に対してあらたに胃ろうを造設することに,どのようなプラス面とマイナスの側面があるのか.「キュア(cure)からケア(care)へ」というターミナルケアの大前提のなかで,老年差別に混同されないよう,家族も含めた医療・ケアチーム内で十分な検討を行う必要がある褥瘡概要● 終末期には長時間の同一体位のほか,栄養不良,るいそう,オムツによるむれや尿便による化学的刺激,ギャッチアップの際に背部にかかるズレ力などが誘発因子として指摘されている.褥瘡の発生リスクを査定するブレーデンスケールを構成する評価項目は,「知覚の認知」「湿潤」「活動性」「可動性」「栄養状態」「摩擦とずれ」の6項目であり,終末期にはハイリスクとなりやすい皮膚の観察● 痛みや同一体位による倦怠感を訴えない高齢者もいるので,オムツ交換やシャワー,清拭のたびに,仙骨部や大転子部などの好発部位の皮膚の状態を観察し,その異変を早期に発見する● 体位変換でさえ疼痛や呼吸困難感を増強させることもあるので,1回のケアの際に観察と処置も行う,というようにできるだけ高齢者に負担の少ない方法を工夫する除圧と良肢位● 仙骨部と大転子部にかかる圧を軽減する姿勢として「30度側臥位」が推奨されている.これは,やや横向きの側臥位となり,臀筋群で体を支える姿勢である● 一般には2時間に一度の体位変換が推奨されているが,体位変換による苦痛が大きい場合や在宅で介護者が一人きりの場合など,除圧マットやエアーマットを使用したい早期対応● 褥瘡の重症度によって対処方法が異なるので,評価に基づいて方法(塗布剤の種類など)を選択する● 重症度評価にはNPUAPNationalPressureUlcerAdvisoryPanel(米国褥瘡諮問委員会)の分類やDESIGN(褥瘡重症度分類)などがある● 以前は患部を乾燥させることが推奨されたが,現在は組織再生のために患部の保湿が重要とされている