ブックタイトルナースのための微生物学 改訂6版

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概要

ナースのための微生物学 改訂6版

ことは許されない.微生物学には,このように他の基礎医学にはない特色がある. 微生物学の歴史微生物の存在が知られる前から,ある種の病気はヒトからヒトへ伝染することが知られていた.実際に細菌の存在を初めて顕微鏡(自作の)を使って発見したのはオランダのレーウェンフーク(1632?1723,図1-1)である.しかしながら,このような微生物の存在が伝染病と結びつけて考えられるようになったのはさらにそれから約200 年後,フランスのパスツール(1822?1895,図1-2)とドイツのコッホ(1843?1910,図1-3)によってであった.コッホは現在の微生物学で日常行われている基本的な技法を完成し,19 世紀終わりから20 世紀初めにかけて,次々と発見された病原微生物の発見の歴史に大きな影響を及ぼした.この時代には日本人の活躍も目覚ましく,北里柴三郎(図1-4)が破傷風菌の純培養に成功,志賀潔が赤痢菌を発見している.ウイルスの発見もほぼ同時代で,1892年にロシアのイワノフスキーが,タバコモザイク病の病原体が細菌よりさらに小さい微生物であることを見出したことから始まる.予防接種はイギリスのジェンナー(1749?1823)の種痘法から始まり,パスツールの炭疽病や狂犬病のワクチン開発につながった. 感染症の現状わが国を含む先進国では感染症のうち,かつて猛威をふるい,多数の人命を犠牲にしてきたコレラやペストなどの伝染病は,衛生状態の向上と化学療法やワクチンなどを主とした対策が功を奏し,急速にその数を減少させてきた.地球レベルで考えても痘瘡(天然痘)の根絶は近代医学のもたらした輝かしい勝利であり,ポリオもまたそれに近い状態になりつつある.しかし一方では,この30 年ほどの間にエイズや腸管出血性大腸菌感染症のようにそれまで人類に知られなかった全く新しい感染症が出現したり,結核やマラリアなど,以前からある感染症のなかで再びその数を増してくるものがあるなど,別の問題が生じてくることになった.1970 年頃より新しく人類社会に知られるようになった感染症のことを新興感染症,再度問題になってきた感染症のことを再興感染症という.前者には上2 ● 微生物学への入門