ブックタイトルナースのための微生物学 改訂6版

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概要

ナースのための微生物学 改訂6版

らせん菌群1?数回のわん曲を持つグラム陰性桿菌で,一端または両端に鞭毛を持つ.3つの属が含まれる.a.スピリルム属Spirillumらせんの数が2?3のグラム陰性桿菌で両端に多数の鞭毛を持ち,一般に好気性である.ただし本属の唯一の病原菌である鼠咬症スピリルムS. minorはまだ培養が成功していない.本菌(0.2?0.5×3?5 mm)はネズミなどの口腔常在菌であり,咬傷によりヒトに感染すると局所の腫脹と潰瘍の形成を伴う熱性疾患(鼠咬症)を起こす.ペニシリン,ストレプトマイシン,テトラサイクリンなどが有効である.b.カンピロバクター属Campylobacterグラム陰性で芽胞を持たず,1?数回わん曲した細菌(0.2?0.3×1.5?5 mm)で,一端または両端に鞭毛を1 本持っている(図7-15).微好気性(9 頁の脚注参照).本属のカンピロバクタージェジュニC. jejuni はヒトの下痢症の主要原因の一つである.哺乳動物や鳥類の腸内常在菌で,不適切に調理された鳥獣肉を介して感染する*.食中毒の原因菌である(195 頁).種々の抗菌薬に感受性であり,治療上の問題はあまりない.またカンピロバクターフィータスC. fetusはときに下痢の原因となるほか,日和見病原体として全身感染を起こすことがある.c.ヘリコバクター属Helicobacterヘリコバクターピロリ*H. pylori が胃・十二指腸潰瘍および胃癌との関係で注目されている.グラム陰性,芽胞を持たず,形態はカンピロバクターと似ているが,一端に複数の鞭毛を有する点が異なる(図7-16).微好気性.強いウレアーゼ活性を持ち,これで尿素を分解してアンモニアを作って胃液の塩酸を中和し,胃・十二指腸粘膜に寄生する.潰瘍の発生は,菌の産生する毒素とアンモニアによる粘膜上皮の傷害によって引き金が引かれるためと思われる.また胃癌を誘発するメカニズムの研究も進んでいる.124 ●細菌学各論