ブックタイトル母乳育児支援講座 改訂2版

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概要

母乳育児支援講座 改訂2版

393.母乳の生化学1:母乳の構成成分? 母乳中の脂肪の98% は球形で,脂肪球と呼ばれ,脂肪球の核となっているのはトリグリセリド(中性脂肪)である(?Step up-1).? 脂肪球を覆う膜には,母親の乳腺細胞膜の成分であるリン脂質,コレステロール,糖たんぱくが含まれる.? 母親が摂取した食事(栄養素)により,脂肪の構成成分は変化するが,母乳中の脂肪の量は変わらない(表3-1).脂 肪 酸?? 脂肪酸の分類と母乳中に含まれる脂肪酸の種類を表3-2,3-3に示す.? 脂肪酸の組成は母親が摂取した食事の影響を強く受ける?.? 例:厳格な菜食主義の女性の母乳には,通常の西洋食をとっている女性の母乳よりもリノレン酸が多く含まれる.? 母親が摂取した脂肪酸が母乳中に移行するまでの時間は,脂肪酸の種類によって,7 ~ 15 時間と異なり1),1 回の食事が母乳中の脂肪酸組成に3 日間影響する可能性があるといわれている(最も大きな影響は摂取後24時間にみられる).影響因子母乳への影響妊娠週数が短い多価不飽和脂肪酸が多い乳汁生成早期リン脂質,コレステロール量が多い妊娠(出産)回数が多い内因性脂肪酸合成が低下乳汁産生量が多い脂肪含量低下1 回の哺乳授乳開始時は少なく徐々に増加授乳間隔が短い脂肪含量増加母親の脂肪摂取量が少ない内因性中鎖脂肪酸(C6 ~ C10)の合成増加母親のコレステロール摂取量コレステロール含量には影響なし喫 煙脂肪含量低下表3-1 母乳中の脂肪含量に影響を与える因子とその影響トリグリセリド:児の体内で消化され,脂肪酸とグリセロールに分解される.リン脂質:肺のサーファクタント合成に利用されたり,リン脂質の一部であるスフィンゴミエリンは脳神経系の発達に関与したりと重要な働きをしている.コレステロール:ステロイドホルモン,胆汁酸,ビタミンD などの前駆体に利用される.? 新生児,乳児における脂肪酸の役割・ 成長のためのエネルギー・ 網膜と神経組織の発達・ 細胞膜の合成・ ホルモン合成? 乳管閉塞を繰り返す母親に対しては,飽和脂肪酸を避けるとともに1 日にスプーン1 杯のレシチンをとるように勧められることもある.表3-3 母乳中(成乳100g:98.3mL)に含まれる脂肪酸量成分名値脂肪酸総量3.5g飽和脂肪酸1.32gオクタン酸 3mgデカン酸 37mgラウリン酸 170mgミリスチン酸 180mgパルミチン酸 730mgステアリン酸 190mgアラキジン酸 6mgベヘン酸 2mgリグノセリン酸 2mg一価不飽和脂肪酸1.52gミリストレイン酸 5mgパルミトレイン酸 81mgオレイン酸 1,400mgイコセン酸 19mgドコセン酸 4mgテトラコセン酸 2mg多価不飽和脂肪酸0.61gn-3 系0.09gα - リノレン酸 47mgEPA 8mgドコサペンタエン酸 8mgDHA 30mgn-6系0.52gリノール酸 490mgγ - リノレン酸 3mgイコサジエン酸 9mgイコサトリエン酸 9mgアラキドン酸 13mg(文献50より筆者作成)表3-2 脂肪酸の分類分 類脂肪酸の種類多く含まれる食品飽和脂肪酸カプリル酸,デカン酸,ラウリン酸,パルミチン酸などウシ,ブタの脂などに多く含まれる不飽和脂肪酸一価不飽和脂肪酸オレイン酸,バクセン酸などオリーブ油,サフラワー油などに多く含まれる多価不飽和脂肪酸n-3系α-リノレン酸,DHA(ドコサヘキサエン酸),EPA(エイコサペンタエン酸)など大豆油,ヒマワリ油,魚に多く含まれるn-6系リノール酸,γ-リノレン酸,アラキドン酸など