ブックタイトル臨床漢方小児科学

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概要

臨床漢方小児科学

小児科漢方を理解するために1012.古典に立脚した原論的理解 漢方医学を総合的に解説した古典でも,内科に関する記載が圧倒的に多い.やはり,まずは成人を対象として全般的な漢方医学について理解することが,小児科漢方を極める近道と考える. 第二部「小児における漢方医学の基本」では,本章に続いて次のⅡ章では,成人を対象とした「漢方医学概説」を取り上げる.最初に漢方医学の特質についての理解が重要である.日本の伝統医学である漢方医学と中国における伝統医学である中医学の違いについても確認する必要がある.西洋医学と同様に,漢方医学においても生理学,病態学,病理学,病因学,診断学,治療学の分野が存在するが,系統立てた構成はなされていなかった.中医学においても,適切に分類されているとはいえない状況である.そこで,筆者は病態病理学の分野で,より系統的な分類を構築した.伝統医学に独特の理論があること自体が学習意欲を低下させることがあるが,その体系に不備があると,その意欲低下は激増してしまうからである.現代医学によって疾患病理が解明されると,漢方医学の考え方にも修正が必要になろう.適切かつ柔軟な対応が望まれる. Ⅲ章は,「漢方小児科学」である.西洋医学における小児の発育,発達の理論を漢方医学理論に基づいて変換して,成人対象の漢方医学的考え方を調整する.小児の特色である発育と発達を考慮すると,漢方医学における生理学,病態学,病因学を学習する場合,新生児から乳児期,幼児期,学童期,思春期に分類して,各時期において検討することが望ましいと判断した.なぜなら,各時期と藏府の発達とに関連性があるからである.成人における藏府の理解が,小児における藏府の発達と関連づけることで深まることが期待される. Ⅳ章は,「漢方医学の歴史」である.陰陽五行論を元に,治療経験を通して伝統医学の考え方が変遷していった過程を理解することは,現状における漢方医学の理論を把握することに役立つ.さらに,今後の理論の修正においては不可欠な内容となることから,漢方医学を専門とする者にとっては,避けては通れない分野といえる.3.現代西洋医学を結合させた折衷的理解 古人は,漢方医学に取り組むには西洋医学の理解を一旦排除すべきとした.しかしながら,今日においては漢方医学の基礎研究も進歩しており,一概に西洋医学を無視する方向性は適さない. これまでの経験に裏打ちされた伝統医学では,現代西洋医学で解明された事実と異なることが種々認められる.それは,古代における科学者の力量の限界であって,非難すべきものでもない.その限界はやむを得ないものとして受け止め,どのように限界があったのかを理解することが重要である.一方で,現代西洋医学で解明されたことと一致することも多くある.これらについて,漢方医学的に落とし込んで理解を深めることもさらに大切なことである.Ⅱ章,Ⅲ章では,西洋医学的な基本事項も踏まえながら,成人と小児の漢方医学的特徴を論じている. 以上,小児科漢方を理解する,さらには発展させるためには,西洋医学と漢方医学とを十分に対比しながら学習することが望ましいと考える(図3).