ブックタイトル臨床医のための漢方薬概論

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臨床医のための漢方薬概論

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臨床医のための漢方薬概論

60 小柴胡湯 343症例2 肝炎に小しょう柴さい胡こ湯とう合ごう茵いん?ちん蒿こう湯とう(松田邦夫治験例)60)48 歳男性,商社社長.初診は,昭和45 年11 月.若い時から精力的で商社の歴史に残る大儲けを達成し,現在は大商社の社長になっている人物である.…慢性肝炎であった.…中肉中背で,腹診上両側胸脇苦満があり,左下腹部に圧痛が著明である.そこで小柴胡湯合茵?蒿湯(大黄1.0)を主方とし,桂けい枝し茯ぶく苓りょう丸がんを兼用とした.…その後多忙に拘らず,真面目に服用を続け,翌46 年9月の診察では,?血圧痛が消失していたので桂枝茯苓丸を打切り,以後は小柴胡湯合茵?蒿湯のみとした.そして47 年1 月には肝機能が全く正常化したので打切って様子をみようとしたところ,漢方薬を長く飲んでいると何か副作用がありますかという.そこでこの薬はそんなことはないと答えると,体調がよいのでぜひ続けたいというので,以後も継続することにした.出張が多いので,途中からエキス剤に変えて昭和61 年…まで16 年間,ほとんど1 日も欠かさずに飲み続けている.(抄)鑑 別■大だい柴さい胡こ湯とう肝炎などで要鑑別.体質体格頑健で胸脇苦満が強い.多くは便秘している.高血圧,脂肪肝,肥満,胆石症,抑うつ傾向,肩こりなどを認める例が多い.■柴さい胡こ桂けい枝し湯とう感冒などの急性発熱性疾患では,小柴胡湯適用例に似るが,頭痛,悪寒,発汗,身体痛などをともなう者に用いる.慢性疾患では,腹痛や頭痛があり,心身症傾向のある疾患で,胸脇苦満と腹直筋の緊張が強いことが使用の目安にされる.■柴さい胡こ桂けい枝し乾かん姜きょう湯とう咽喉炎,気管支炎などの回復期に鑑別が必要.柴胡桂枝乾姜湯は,痩せ型の虚弱者で寝汗,微熱が続く,動悸,息切れなどを訴える例が多い.■補ほ中ちゅう益えっ気き湯とう感冒回復期で微熱が残る例で要鑑別.補中益気湯は体質虚弱で元来から疲れやすい者に寝汗,微熱などが続くときに用いる.肝炎などの慢性疾患でも要鑑別で,この場合は疲労倦怠感の強い点が目安となる.■半はん夏げ瀉しゃ心しん湯とう体質体格は小柴胡湯に類似するが,胃炎症状,胃のつかえ感,不消化便下痢,腹鳴などを認める例に用いる.■小しょう建けん中ちゅう湯とう感冒にかかりやすい小児の体質改善で要鑑別.小建中湯は,血色の悪い痩せ型の下垂体質で腹痛を訴える例に使用される.Evidence■小柴胡湯の感冒に対するプラセボ対照二重盲検比較試験(加地ら,2001)61)〔対象・方法〕発症後5 日間以上経過した感冒患者のうち,咳嗽,口中不快,食欲不振,倦怠感のいずれかをともなう者(20~75 歳)を対象に,プラセボ対照二重盲検群間比較試験を54 施設で施行.ツムラ小柴胡湯またはプラセボを1 回2.5g 1 日3 回で1 週間投与した.総症例数331 例(小柴胡湯170 例)であった.解析対象は,主解析対象250 例,安全性268 例, 有用性217 例. 解析方法は,Wilcoxon 順位和検定(W).Fisher 正確確率検定(F)を用いた.〔結果〕①全般改善度:投与群>プラセボ群(W:p<0.001).改善以上の率;投与群64.1%> プラセボ群43.7%(F:p<0.001).②症状別改善度:投与3~4 日後の咽喉痛・倦怠感,投与終了後の痰の切れ・食欲不振・関節痛・筋肉痛で有意改善.改善以上の率は小柴胡湯し