ブックタイトル臨床医のための漢方薬概論
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臨床医のための漢方薬概論
342小柴胡湯・頭注54)には,「柴胡の諸方は皆,“瘧ぎゃく”(マラリア様疾患.周期的に発熱する熱病の意か)によい.胸脇苦満のあることがその目安となる」とし,流行性耳下腺炎(時毒・傷寒発頤),頭部丹毒(頭ず瘟うん55))などで,胸脇苦満,往来寒熱,咽乾喉燥する者に用いるとし,痘瘡,小児の発熱,吐乳,中耳炎(?)などへの応用を記載する.■浅あさ田だ宗そう伯はく(1815─94)は『勿ふつ誤ご薬やく室しつ方ほう函かん口く訣けつ』56,57)で,「小柴胡湯は,“往来寒熱”,“胸脇苦満”,“黙々として飲食を欲せず”,“嘔吐”,あるいは“耳聾”が使用目標である.…小柴胡湯は総て両肋の“痞ひ?こう拘こう急きゅう”を目標として用いられる.いわゆる胸脇苦満がこれである.…また小児“食停”(消化不良)に外邪を併発したり,“瘧”のようなものも,この処方で治る.また慢性の便秘は,この処方でほどよく大便を通じ,病が治るものである.…後世,三禁湯と名づけたのは,汗吐下を禁ずる状態に用いるからである」とする.4 近年の論説■ 『漢方診療医典』58)には,「熱のあるものに本方を用いるときは少陽病の熱型である往来寒熱,または身熱があって,胸脇苦満のあるものを目標にする.その他に,口苦,舌白苔,咽喉乾燥,食欲不振,心煩,悪心,嘔吐などを訴えることもある.熱のない一般雑病に用いるときには,胸脇苦満を目標にする.小児には特に本方の適するものが多い.一体に胸脇苦満のある患者は,腹部にある程度の緊張があり,軟弱無力ということはない.もし脈が微弱で,腹力のない場合には,本方を用いないがよい.本方は応用範囲が広く,諸種の熱性病,感冒,流感,咽喉炎,耳下腺炎,肺炎,胸膜炎,気管支炎,肺結核,リンパ腺結核,肝炎(黄疸),胃腸炎などに用いられる」とある.■大おお塚つか敬よし節のり(1900─80)は『症候による漢方治療の実際』59)で,発熱,有熱時の頭痛,諸種の化膿性疾患,「感冒・気管支炎・流感・肋膜炎・肺結核などで,みぞおちがつかえて食欲が減少し,舌がねばり,あるいは白苔がつき,あるいは口が苦く,胸が重苦しく,咳嗽するもの」,「熱のある病気で…食を欲せず,あるいは悪心または嘔吐のあるもの」,「肝炎,胆嚢炎,流感,猩紅熱,腎炎などの初期にみられる嘔吐」,肩こり,てんかん(桂けい枝し加か芍しゃく薬やく湯とうと合方),中耳炎,視力障害,口周囲の乾燥発赤,湿疹・蕁麻疹,かぜその他の呼吸器疾患一般などに用いるという.症 例症例1 反復性扁桃炎に小しょう柴さい胡こ湯とう加か 桔き 梗きょう石せっ膏こう(筆者経験例)〔患者〕36 歳 主婦〔主訴〕生理のたびにかぜをひきやすい.〔既往歴・妊娠歴〕27 歳:流産.28 歳:第一子帝王切開にて出産.30 歳:第二子妊娠,子宮頚管縫縮術で満期産.〔現病歴〕第二子出産後頃から体が疲れやすくなりかぜをひきやすくなった.最近は毎月の月経前になると扁桃炎を繰り返す.高熱が出たこともある.解熱後も咳と痰が続いて治りにくい.耳の奥の痛みと耳閉感が起こりやすい.抗菌薬は胃が悪くなり下痢するので飲みたくないと言う.〔身体的所見〕身長157㎝,体重50㎏.栄養良好.皮膚湿潤.腹部に軽い胸脇苦満を認める.咽頭後壁は発赤が強い.両側扁桃は肥大,発赤腫脹して膿が付着.〔経過〕葛根湯,柴さい胡こ桂けい枝し湯とう,当とう帰き芍しゃく薬やく散さんなどを2~6 週間ずつ服用したが無効.6 ヵ月余り経過の後,小柴胡湯加桔梗石膏にした.その1 ヵ月後から,症状が軽くなるというので,同処方を継続.6 ヵ月目にはほとんど症状がなくなった.約4 年間服用して完治廃薬した.