ブックタイトル臨床医のための漢方薬概論
- ページ
- 5/8
このページは 臨床医のための漢方薬概論 の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 臨床医のための漢方薬概論 の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
臨床医のための漢方薬概論
60 小柴胡湯 339【禁忌】次の患者には投与しないこと:①インターフェロン製剤を投与中の患者.②肝硬変,肝癌の患者(間質性肺炎が起こり,死亡等の重篤な転帰に至ることがある).③慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10 万/mm3 以下の患者(肝硬変が疑われる).論 説1 原 典張ちょう仲ちゅう景けい『傷しょう寒かん論ろん』『金きん匱き要よう略りゃく』(=「新しん編ぺん金きん匱き方ほう論ろん」)『金きん匱き玉ぎょく函かん経けい』小柴胡湯に関する記載は多いが,ここでは主要な条文のみ解説する.なお,小しょう建けん中ちゅう湯とう,三さん物もつ黄おう?ごん湯とうとの鑑別を述べた条文は,これらの処方の項で述べた.1 .『傷寒論』巻第三・弁太陽病脈証并治中第六〈1〉12)〔条文〕傷寒五六日,中ちゅう風ふう,往来寒熱,胸脇苦満,?もく?もくとして〈注1〉13 ─19)飲食を欲せず,心しん煩はん,喜き嘔おう,或あるいは胸中煩して嘔おうせず,或は渇し,或は腹中痛み,或は脇きょう下か痞ひ?こうし,或は心下悸き して小便利り せず,或は渇せず,身に微熱あり,或は?がいする者は,小柴胡湯之これを主つかさどる〈注2〉20,21).〔大意〕“傷寒”(急性発熱性の重篤な疾患)にかかったが,病気の勢いが緩慢で,発病後5,6 日頃から,悪寒がやむと熱が出,熱が下がると悪寒するという型の発熱(往来寒熱)に変わり,胸から脇にかけ何かがつまったように苦しく(胸脇苦満),食欲がなく,胸苦しさを覚え,しばしば吐くようになった.これは小柴胡湯を用いるべき病状(主治)である.ところが,ときとして,胸苦しくても吐かないこともあり,口が渇いたり腹が痛んだり,脇下がつかえて硬かったり,心下部で動悸がしたり,小便が少なかったり,あるいは,口渇なく,身体の内に熱がこもっていたり,あるいは咳の出ることもある.このような場合も,小柴胡湯を用いる22).〔解説〕尾お台だい榕よう堂どうは「此の章,小柴胡湯の正症なり」(『類るい聚じゅ方ほう広こう義ぎ』)と,本条文が小柴胡湯の最も本質的な病態(正証)を示すという23,24).この条文は小柴胡湯を急性の熱病に用いる際の典拠となるが,一般雑病(急性熱病以外の慢性疾患)に用いるときは,胸脇苦満を目標として応用し,他の条を参照する22).2 .『傷寒論』巻第四・弁太陽病脈証并治下第七25)〔条文〕婦人中ちゅう風ふう,七八日,続いて寒熱を得え,発ほっ作さ時ときあり,経けい水すい適たまたま断つ者は,此これ,熱,血けっ室しつに入い ると為な す.其そ の血けつ,必ず結けっす.故に瘧ぎゃく状じょうの如ごとく,発作時ときあらしむ.小柴胡湯之を主る〈注3〉26).〔大意〕婦人が月経の途中で,感冒のような軽い発熱性疾患にかかり,普段より早く月経が止まってしまった.これは熱が“血室”に入ったからである.これにともなって,まるでマラリアのように,悪寒と熱感が突発的に繰り返し起こるようになり,7,8 日を経過した者は,小柴胡湯の主治である.〈注1〉?もく?もく:「?」は「黙」と同じとされるが,喩ゆ嘉か言げん13)は「??は昏こん昏こんの意にして静黙に非あらざるなり」とする.この説は,多た紀き元もと簡やす14),尾台榕堂15)も引用する.昏は「くらい」意である.ここから「??」を抑うつ状態を示すとする解釈が生じたようで,湯ゆ本もと求きゅう真しん16)は,「精神鬱々として言語飲食する気力なきなり」とし,大塚敬節17)も「気分が重くて,だまりこくっている状」とする.しかし,浅田宗伯18)は「飲食を欲せざるの皃かたち」(食欲不振の形容)とする.山やま田だ業なり広ひろ19)は,静かなこととする.〈注2〉ほぼ同文が弁可発汗病脈証并治・第十六20)にもある.ただし,「傷寒五六日,中風,往来寒熱」を「中風,往来寒熱,傷寒五六日以後」,「心煩」を「煩心」,「小柴胡湯,之を主る」を「小柴胡湯に属す」とする.『金匱玉函経』21)では,「傷寒五六日,中風,往来寒熱」を」「中風五六日,傷寒,往来寒熱」,「脇下痞?」を「脇下痞堅」,「身に微熱あり」を「外に微熱有り」とし,「或は?する者」の「者」がない.〈注3〉『金匱玉函経』26)に同文がある.小柴胡湯し