ブックタイトル臨床医のための漢方薬概論

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臨床医のための漢方薬概論

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臨床医のための漢方薬概論

338応用には,急性上気道炎,扁桃炎,扁桃周囲炎,咽喉頭炎,気管支炎,中耳炎,外耳道炎,耳下腺炎,リンパ節炎などが挙げられる.いずれも必要に応じて西洋医薬と併用するのが実際的である.体温が高くても,自覚的な悪寒が強く,顔色蒼白で手足の指先が非常に冷たく,小さく弱く触れにくい脈で徐脈傾向がある場合には,漢方的には“陰”と考えられるので用いない.2 .慢性疾患慢性症では,遷延性ないし慢性の炎症性諸疾患に用いる.“胸脇苦満”(図1)と呼ばれる腹部所見を認めることが重要な使用目標とされる.体格中等度で栄養状態良好の者が対象となる.痩せた虚弱者には用いない.“胸脇苦満”とは,季肋部の不快な膨満感という自覚症状を意味する場合と,肋骨弓下縁付近の腹筋緊張亢進および同部の圧迫時不快感という他覚所見を指していう場合とがあるが,慢性症では後者の腹部所見をいう.なお,肝硬変などの肝腫大,脾腫大,腫瘍性疾患,神経質で腹壁に触れると緊張する者などを胸脇苦満と誤ることがあり,注意を要する.慢性疾患における応用には,慢性肝炎,遷延性ないし慢性気管支炎,気管支喘息などが挙げられる.慢性胃腸障害,産後回復不全などにも用いる.その他,感冒に罹患しやすく,咽喉炎,扁桃炎,気管支炎を繰り返す者,扁桃肥大がありかぜをひきやすいという例に,いわゆる体質改善効果を期待して用いる.3 .使用上の注意間質性肺炎,薬剤性肝障害,膀胱炎などの副作用が報告されている.とくに間質性肺炎について,以下の【警告】と【禁忌】が定められている.【警告】①本剤の投与により,間質性肺炎が起こり,早期に適切な処置を行わない場合,死亡等の重篤な転帰に至ることがあるので,患者の状態を十分観察し,発熱,咳嗽,呼吸困難,肺音の異常(捻ねん髪ぱつ音おん),胸部X 線異常等があらわれた場合には,ただちに本剤の投与を中止すること.②発熱,咳嗽,呼吸困難等があらわれた場合には,本剤の服用を中止し,ただちに連絡するよう患者に対し注意を行うこと.表2 小柴胡湯の使用目標と応用■ 急性疾患(かぜ症候群など)・発病後数日以上経過し,弛張熱や午後に微熱が出る者・発熱して,口乾,口苦,食欲不振などの消化器症状がある者・感冒,咽喉頭炎,扁桃炎,耳下腺炎,中耳炎,頚部リンパ節炎,気管支炎■ 慢性疾患・虚実中間程度の体質者で胸脇苦満を認め,肩こり,食欲不振,口が苦いなどの非特異的徴候をともなう者・再発性咽喉炎,再発性または慢性扁桃炎,再発性中耳炎・遷延性または慢性気管支炎,気管支喘息・慢性胃腸障害,慢性胃炎・急性または慢性肝炎,肝機能障害など■ 副作用・間質性肺炎,薬剤性肝障害など図1 胸脇苦満(中等度)腹壁全体に弾力あり皮下脂肪発達良好胸脇苦満中等度