ブックタイトル臨床医のための漢方薬概論
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臨床医のための漢方薬概論
60 小柴胡湯 337処方の特徴1 処方概要小柴胡湯は,慢性肝炎,気管支炎など,亜急性ないし慢性の炎症性疾患に用いる漢方薬であり,また慢性胃腸障害などにも用いる.柴さい胡こを含む柴胡剤(表1)の代表的処方である.1 .伝統的考え方による使用法小柴胡湯は,原典の『傷しょう寒かん論ろん』では,“傷しょう寒かん”という疾病の経過中の“少しょう陽よう病びょう”と呼ばれる病態に用いる処方とされる(p.344 附記1参照).小柴胡湯を用いる上で重要な臨床的症候は,急性発熱性疾患では“往おう来らい寒かん熱ねつ”(弛し張ちょう熱ねつ),慢性疾患では“胸きょう脇きょう苦く満まん”(後述)である.こうした徴候に加えて,“陰いん病びょう”(痩せ型の低栄養状態で低体温傾向があり,強い冷えのあるもの)ではないと判断されれば用いて差し支えない.小柴胡湯は別名を“三さん禁きん湯とう”という.汗かん吐と下げ-①発汗(葛かっ根こん湯とう,麻ま黄おう湯とうなどを用いること),②嘔吐(吐剤を用いること,現在は行われない),③瀉しゃ下げ(大だい承じょう気き湯とうなどの大黄剤を用いること)のいずれの治療法も行えない病態,すなわち“三禁”の病態が適応であり,“病邪”を“和解”させると表現される.2 .柴 胡柴胡は,セリ科のミシマサイコBupleurumfalcatum Linne(Umbelliferae) の根1)で, 薬理学的には2 ─10),サイコサポニン類,サポゲニン類などの成分が知られており,中枢抑制(強い鎮痛,鎮静,睡眠延長など),抗炎症作用(炎症抑制,血管透過性亢進低下など),解熱,利尿,抗潰瘍,肝たん白合成促進,肝グリコーゲン量増加,コレステロール低下,細胞膜保護作用が認められている.含有成分のサイコサポニンa,d に肝障害抑制・抗炎症作用,BR5-Ⅰ・BR-2Ⅱb に抗補体作用が認められている.臨床的には11),「解熱剤で,胸脇苦満,寒熱往来,呼吸器病に用いる」とされる.2 使用目標と応用(表2)1 .急性疾患急性症における小柴胡湯の適応症候は,発病後数日以上を経過し,悪お寒かんと熱感が交互にくる発熱(往来寒熱),夕方の微熱,胸肋部が張ったような不快感あるいは鈍痛(胸脇苦満),口が苦い,食欲不振,嘔気などである.咳,痰,あるいは軽いめまい感などをともなう場合も少なくない.表1 柴胡を含む漢方薬(広義の柴胡剤)処方の出典漢方薬『傷寒論』『金匱要略』(狭義の柴胡剤)大柴胡湯 柴胡加竜骨牡蛎湯 四逆散小柴胡湯(およびその類縁漢方薬:柴朴湯,柴苓湯,柴陥湯など)柴胡桂枝湯 柴胡桂枝乾姜湯『傷寒論』『金匱要略』以外加味逍遙散 抑肝散 抑肝散加陳皮半夏 神秘湯 竹?温胆湯十味敗毒湯 滋陰至宝湯 荊芥連翹湯 柴胡清肝湯 乙字湯補中益気湯 加味帰脾湯60小しょう柴さい胡こ湯とうshosaikoto〔構成生薬〕柴胡,半夏,黄?,人参,大棗,甘草,生姜製品番号:9小柴胡湯し