ブックタイトル症例に学ぶ がんの漢方サポート

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概要

症例に学ぶ がんの漢方サポート

64第2章 がん患者の漢方サポートファイル58歳男性X - 7年10 / 25,某大学病院で,右頸部のリンパ節転移(原発不明癌)の切除術後,化学療法を受けた.X - 2 年に再発して舌根癌と診断され,12 / 4 から8 週間,放射線化学療法(86 Gy)を受け,この間,内視鏡的胃瘻造設(PEG)により栄養サポートを受けた.X 年4 / 8,対側の舌根部に転移し,再度手術を受けた.以後,完全緩解を維持していたが,再手術後は発声が困難となり,大きな声が出せず,復職はしたものの,仕事は十分にできなかった.出不精で,引っ込み思案となり,気持ちが沈みやすい.全身倦怠感,口腔内の放射線照射後の痛み,両耳の難聴,不眠を訴えた.蕁麻疹と考えられる,皮膚のかゆみと皮膚描記症があった.手術の際,主治医が急用のため,他の医師が術者となったことにクレームをつけ,わだかまりを持っていた.10 / 16,頭頸科から紹介されて当科を受診した.年齢 ・性 病  名 舌根癌,放射線化学療法・手術後主訴 ・症状 大 きな声が出せない.抑うつ.全身倦怠感.放射線治療後の口腔内の痛み.両耳難聴.不眠現 病 歴舌根癌:術後,放射線化学療法後の発声困難,抑うつ,不眠頭頸部癌01a 腹力:やや軟b 胸脇苦満:右にごく軽度(胸脇満微結)c 心下痞?:なしd 臍上悸:高度e 心下悸:軽度f 臍下悸:軽度g 臍傍圧痛:左に中等度h 臍下不仁:高度 本症例は,舌根癌の手術で,主治医が自ら執刀しなかったことに,わだかまりと不満を抱いており,腹診では典型的な柴胡桂枝乾姜湯証の腹候を呈していた.同湯を服用後に冷えが改善し,大きな声が出せるようになり,精神的に落ち着いてきた.しかし3 ヵ月後に体熱感が続き,疲れやすいと患者が訴えたため,証が変わったと考え,柴胡桂枝乾姜湯から補中益気湯に変更したところ,数日で動悸と不整脈が出現した.それにより証が変わっていないことが確認でき,元の処方に戻した.食欲良好.不眠で睡眠薬を服用.普通便4 回.夜間尿3 回.足の冷えが強く,電気敷毛布を用いて寝る.発汗傾向なし.口渇軽度.唾液分泌障害はない.漢方的問診腹 候●c●d●g●e●a●f●h●b身 長180cm体 重76kg舌 候乾燥舌.マダラ状に厚い白苔. 舌下静脈怒脹中等度. 口唇は暗紫色.脈 候浮,巾中等度,緊張中等度病前 85kg,術後72kgまで減少