ブックタイトル臨床で活かす がん患者のアピアランスケア

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概要

臨床で活かす がん患者のアピアランスケア

3このように,がん医療のなかでは軽視されてきた外見の症状であるが,2012 年の全国がん診療連携拠点病院397 施設を対象とした質問紙調査(回答率71%)□4)では,94%の施設がなんらかの外見支援を行っていると回答した.すなわち,医療者の意識が,患者の外見の症状にも向きはじめたのである.その最大の要因は,患者の外見の問題に対する意識の変化と支援ニーズの高まりにある.近年のがん治療(手術,放射線療法,薬物療法)の進歩や通院治療環境の基盤整備は目覚ましく,全がんの5 年生存率が上昇し,仕事を持ちながら通院している患者が32.5 万人存在する(厚生労働省「平成22 年国民生活基礎調査」を基に同省健康局にて特別集計).しかし,患者が社会と接触しながら治療生活を送ることは,よりがん治療に伴う外見の変化を患者に意識させる結果となる.実際に,がん患者638名に対する筆者らの調査□5)では,治療に伴う身体的副作用のなかでも,外見に現れる副作用の苦痛度が高かった.そして,平均年齢60 歳で,男性が4 割も含まれている対象集団であるにもかかわらず,その91%が,仕事中は外見を従来通りに装うことは重要だと答え,98%が外見の情報を病院で提供してほしいと答えていた.また,医療者の状況も変化してきている.臨床現場では,2000 年代以降に開発の中心となった分子標的治療薬のように,皮膚障害の程度と抗腫瘍効果が関連する薬□6,□7)が登場するなど,外見の症状を上手にコントロールしながら治療を継続させるための処置や患者指導などが求められるようになった.さらに,医療政策も大きく変化し,2007 年にはがん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画□8)が策定され,従前からのがん表1 がんにおける三大治療と主要な外見症状手術身体の一部の喪失,形態変化(醜形),瘢痕,ストーマ,リンパ浮腫放射線療法急性放射線皮膚炎,脱毛,色素異常,血管拡張,瘢痕,皮膚萎縮薬物療法部位・症状はさまざまである?毛髪の変化 対象部位:頭髪,眉毛,まつ毛,鼻毛,体毛 症  状:□脱毛,薄毛,変色,剛毛,軟毛,縮毛?皮膚の変化 □乾燥,色素異常,白斑,ざ瘡様皮疹,潰瘍,剥離,手足症候群(紅斑・水疱・びらん・亀裂など),爪囲炎?爪の変化 □伸長遅延,菲薄化,巻き爪,色素沈着,変形,変色,剥離,脱落?その他 浮腫1.アピアランスケアとは