ブックタイトルがん患者の輸液・栄養療法

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概要

がん患者の輸液・栄養療法

がんによって生じる栄養障害?腫瘍による消化管の狭窄・閉塞に起因するもの 食道がん,胃がん,大腸がん など?腫瘍が消化液の分泌を妨げるために生じるもの 膵頭部がん,胆管がん など?腫瘍からの出血・体液の喪失がもたらすもの 胃がん,大腸がん など?腹膜播種性転移による消化管の運動障害に由来するもの 各種のがんの腹膜転移?腫瘍が形成する病的交通に起因するもの 直腸膀胱瘻,直腸膣瘻 など? 腫瘍の存在に起因する電解質異常や液性因子の分泌によって引き起こされるものがん治療によって生じる栄養障害?がんに対する手術に起因するもの?がんに対する(化学)放射線療法に起因するもの表1-1 がん患者にみられる栄養障害2 がん患者への栄養療法・輸液療法の必要性ても,その表面は脆弱かつ易出血性である.腫瘍からの失血の結果,消化管由来のがん,とりわけ胃がんと大腸がんでは高い頻度で貧血が認められる.貧血を認める患者には,まず胃がんと大腸がんの存在を除外しなくてはならない.また,肺がん患者に進行する貧血がみられた場合,肺がんの消化管転移,主として小腸転移からの出血の可能性を考慮する.これらのがんからの出血では,血球成分のみならず血漿も喪失される.そのため,貧血に併せてしばしば低蛋白血症,低アルブミン血症も認められる.4 腹膜播種性転移による消化管の運動障害に由来する栄養障害がんの腹膜播種性転移が増大して消化管の内腔を閉塞すると,原発性の腫瘍と同様に通過障害をきたす.また,播種性の転移巣による腸管の固定,小腸の腸間膜の短縮などがしばしば蠕動を障害する.この場合,内腔の狭窄がなくても消化管内容の通過が障害される.いずれの場合も臨床的には腸閉塞の状態であり,栄養障害が進行する.5 腫瘍が形成する病的交通に起因する栄養障害がんは隣接する臓器・構造物を破壊しながら増殖するが,前述したようにそれ自身も死滅していく.そのため,従来は認められない病的な交通を形成する.大腸がんでは,直腸膀胱瘻や直腸膣瘻,大腸皮膚瘻が形成される.消化管の利用は瘻を通過する消化管内容の量を増加させるため,瘻の存在は消化管利用の妨げとなる.また,瘻周囲の炎症や瘻自体からの体液の喪失も栄養状態の悪化を助長する.13