ブックタイトルがん患者の輸液・栄養療法

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概要

がん患者の輸液・栄養療法

2 がん患者への栄養療法・輸液療法の必要性第1章がんの存在に起因する栄養障害(表1-1)1 腫瘍による消化管の閉塞がもたらす栄養障害がんは無秩序に増殖する細胞の集団であるため,正常な構造を狭窄・閉塞する.消化管も例外ではなく,その閉塞は消化管内容や食物の通過を障害し,摂食量の減少から栄養障害を惹起する.食道がんや胃がん,大腸がんなどが消化管の通過障害をきたす代表的ながん種である.食道がんの場合は,しばしば通過障害に起因する自覚症状が発見の契機となる.2 腫瘍による主膵管,胆管の閉塞がもたらす栄養障害腫瘍が消化液の分泌を妨げても栄養障害をきたす.膵頭部がんでは膵液と胆汁の流出が障害され,消化能が低下する.その結果,低栄養となり体重が減少する.胆管がんは発生部位で胆汁の流れを障害する.胆汁の流出障害が高度になれば脂肪の消化・吸収障害から脂肪便となる.3 腫瘍からの出血・体液喪失がもたらす栄養障害がん細胞は早い速度で増殖する一方で,壊死やアポトーシスによって死滅していく.そのため,胃がんや大腸がん,食道がんでは消化管内腔に面する腫瘍組織が脱落してクレーターが形成される.クレーターにはしばしば血管が露出し,出血がみられる.また,クレーターを形成しない腫瘍であっo i tnP? がん患者には,高い頻度で栄養障害が認められる.? がんの治療に伴って,しばしばがん患者の栄養状態は悪化する.? 栄養状態の悪化はがん患者のQOL を損ね,ひいてはがん治療の価値を低下させる.? 骨格筋量の減少は,がん化学療法の有害事象の発生頻度を増加させる.? 体重の減少は,肺がんの独立した予後不良因子である.? がん治療の成績の向上や治療行為の価値を高めるために,がん患者の栄養状態を良好に保つことが肝要である.12