ブックタイトル乳癌アプリケーションノート

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概要

乳癌アプリケーションノート

20?Ⅰ章 基本的評価9 センチネルリンパ節の評価〈センチネルリンパ節の病理学的扱いと陽性の定義〉● 術中診断では,同定されたセンチネルリンパ節についてリンパ節を2 mm スライスの多分割法で,交互にOSNA 法とHE 染色に供する.HE 標本については,最大割面における癌の浸潤サイズを記録する 1, 2).● HE 標本におけるセンチネルリンパ節の取り扱い 3)・isolated tumor cells(ITC):腫瘍の細胞集塊で最大径は0. 2 mm 以下,または最大割面の腫瘍細胞数が200 個以下→ pN0(i +)に分類・micrometastasis : 0. 2 mm を超える最大径かつ最大割面の腫瘍細胞数が200 個より多く,2 mm 以下の最大径→ pN1 mi に分類● OSNA 法の結果によるstaging 3)・組織学的に腫瘍の転移を認めず(HE 標本陰性),OSNA 法のみ陽性(+ I,1 +,2 +)はpN0(mol +)として扱う.1) Tamaki Y, et al:Breast Cancer,2012. DOI 10.1007/s12282 ─012 ─0390 ─x2) Cserni G, et al:J Clin Pathol, 65:193─199, 2012.3) Edge SB, et, al:American JointCommittee on Cancer Cancer StagingManual, 7 th ed, Springer;2010.サイトケラチン19(CK1)は上皮性マーカーの一つであり,本来リンパ組織には含まれていない.OSNA 法は,摘出リンパ節中のCK19 mRNA を定量測定することにより癌の転移診断をする迅速診断法である.摘出リンパ節は一様にすり潰され可溶化溶液により撹拌され,自動装置によりCK19 mRNA が定量測定される.その増幅コピー数により1 +(2. 5 × 102 ?5.0 × 103 コピー/μL),2 +(> 5. 0 × 103 コピー/μL),+Ⅰ(希釈用液にて;> 5.0 ×103 コピー/μL)と3 カテゴリーで転移陽性が定義される.OSNA 法と組織診断法とを比較した文献によると,両者は高い一致率(86.3 ?96.3%)・感度(75.0 ?100.0%)・特異度(88.0 ?98.6%)を有していることが示されている 4 ?13).また,リンパ節全体を可溶化させてCK19 mRNA を測定するため,従来の組織診断の問題点であった「リンパ節内における転移組織の局在によって起こる偽陰性診断」,つまり “見逃し”が回避されうる.さらにPCR 法によるDNA 増幅過程を省略する(RT─LAMP 法)ことにより測定時間が40 分程度となり,また病理診断医間の診断バイアスを排除することができ,客観的に転移診断を評価しうるなどのメリットがある.そのため,OSNA 法は従来の組織診断法の代替法として期待されている.一方でOSNA 法診断と組織診断との“ずれ”は少なからず存在し,OSNA 法のみ陽性(pN0(mol +))の臨床的意義もまだ不確定な部分が多い.OSNA 法は従来の方法に比較し,より微小な転移を検出することが特徴の一つとされるが,それゆえに組織診断では検出されない“分子レベルの転移”を腋窩郭清の対象とするかは不明確である.国立がん研究センター中央病院におけるデータでは,pN0(mol +)症例における郭清腋窩リンパ節の転移率は2.1%であった 14).OSNA 法に関しては,現在多くの研究によりエビデンスが構築されつつあるが,組織診断法との完全移行運用の正当性に関してはまだ結論が出ていない.2013 年9 月時点でOSNA 法を導入している施設は世界で162 施設,日本で81 施設あるが,国内でOSNA 法に完全移行している施設はまだ少ない.4)Tamaki Y, et al:Clin Cancer Res, 15:2879─2884, 2009. 5)Sagara Y, et al:Breast Cancer, 2011. DOI 10. 1007/s12282─011─0324─z. 6)Tamaki Y, et al:Cancer, 118(14):3477─3483, 2012. 7)Visser M, et al:Int J Cancer, 122:2562─2567, 2008. 8)Schem C, et al:VirchowsArch, 454:203─210, 2009. 9)Khaddage A, et al:Anticancer Res, 31:585─590, 2011. 10)Le Frere─Belda MA, et al:Int J Cancer,130:2377─2386, 2012. 11)Bernet L, et al:Histopathology, 58:863─869, 2011. 12)Snook KL, et al:Br J Surg, 98:527─535,2011. 13)Feldman S, et al:Cancer, 117:2599─2607, 2011. 14)Jimbo K, et al:Breast, 22:1194─1199, 2013.Evidence からの考察〔神保健二郎〕