ブックタイトル動きながら考える!内科救急診療のロジック

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概要

動きながら考える!内科救急診療のロジック

372 ER で必要なスキル表Ⅰ- 12 心嚢液貯留の鑑別診断(文献34)より作成)感染性● ウイルス(特にエコー・コクサッキー)● 細菌(特に結核に注意)● 真菌・寄生虫(まれ)非感染性● 膠原病● 心膜障害(心筋梗塞後など)● 悪性腫瘍(主に転移)● 代謝性(粘液水腫・尿毒症)● 外傷(医原性も含む)● 放射線照射● 薬剤性(プロカインアミド・ヒドララジン・イソニアジド・フェニトイン・ペニシリン・抗がん剤・免疫抑制剤など)● 循環動態性(心不全・低アルブミン血症・肺高血圧)図Ⅰ- 14 心嚢液の貯留傍胸骨左縁からの左心室長軸像(心タンポナーデの症例).(提供:広島市立安佐市民病院臨床検査部二宮信雄氏)左心室の全体的な収縮力と局所的な壁運動異常● 用いるプローブ:セクタ● 推奨されるwindow & view左心室の全体的な収縮力:傍胸骨左縁からの左心室長軸像局所的な壁運動異常:傍胸骨左縁からの左心室短軸像● ポイント 細かな左室駆出率(ejection fraction)の測定はこのRUSH examでは不要とされている.つまり,「パッと見た」印象,目算でよいということになる.ER での判断に必要となる範囲の心収縮力の評価については,目算による評価で十分と考えられている35 , 36)(左室駆出率が不要な概念というわけではなく,ERの初療において,その後の初療内容が変わるかどうかという観点においては目算で十分という意味である).目算で左心室の収縮が良好(いわゆる“よく動いている”)と考えられる所見(図Ⅰ-15)①心室壁が一様に同期して動き,収縮期に向かい合う心室壁が接触する(kissing sign)②拡張期に僧帽弁前尖が心室中隔に接触する 上記の所見を参考にして左心室の全体的な収縮力を評価する.収縮力が悪ければ,「大量輸液をすると肺水腫になりやすい」,「輸液負荷しすぎると肺水腫をきたすと予想されるので(血圧が低い場合の)昇圧剤の使用の閾値を低くするべき」とか,過収縮であれば「血管内容量が少ない状況である」などと判断する. このような全体的な収縮力は原則的には傍胸骨左縁からの左心室長軸像で観察する(判断に迷う場合には四腔像や左心室短軸像も追加し,総合的に判断する).Mモードを使うことができるならば,収縮と拡張の様子を経時的に観察できるのでこれらの所見を確認しやすい.