ブックタイトル妊婦の精神疾患と向精神薬

ページ
7/8

このページは 妊婦の精神疾患と向精神薬 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

妊婦の精神疾患と向精神薬

6 妊娠中における大うつ病薬物療法のマネジメントが存在する場合があることが明らかになった.加えて,うつ病を同定するためのカットオフ値を用いると(通常は産後の対象者に施行するために開発されたものだが),妊娠中のうつ病が,従来考えられていたよりも極めて高い有病率であることがAvonの縦断研究によって確かになった22).この研究では,14,541名の女性を対象に妊娠18週および32週にEPDSを施行したところ,得点は妊娠18週において6.62点,妊娠32週において6.72点となり産後の得点5.84(妊娠8週),5.25(妊娠32週)よりも有意に高い得点であった.EPDSのカットオフ値を12点以上とすると,産後8週において9.1%の女性が12点以上に該当したのに対して,妊娠32週においては13.5%の女性が該当した.その後の研究においても,妊娠中の抑うつ症状およびうつ病が高頻度で認められることが明らかになった.Bennettらが行ったシステマティックレビューでは,BDIおよびEPDSを主とした自己記入式質問紙による研究と,構造化された診断面接による研究のそれぞれを対象に検討された23).その結果,構造化された診断面接による有病率は,自己記入式質問紙を用いた有病率より大幅に低いことが判明した.妊娠第1三半期においては,BDIを使用した場合にうつ病の可能性がある妊婦の割合が最も高くなった(図 6.1).妊娠第3三半期においては,EPDSを使用した場合にうつ病の可能性がある妊婦の割合が最も高くなった.ただし,EPDSは産後うつ病を評価するために開発された評価尺度であり,うつ病に関連する身体症状は質問項目に含まれていない.一方,BDIは身体症状に関する質問項目が含まれている.したがって,身体症状を伴う妊娠中のうつ病に関しては,302520151050(点)第1三半期第2三半期BDIEPDS構造化面接構造化面接あるいは質問紙第3三半期図 6.1 ● 質問紙あるいは構造化面接によって評価された妊娠中のうつ病の有病率23)エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)のカットオフ値は10 点以上.ベックうつ病調査票(BDI)のカットオフ値は9 点以上.71