ブックタイトルクロストークから読み解く周産期メンタルヘルス

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概要

クロストークから読み解く周産期メンタルヘルス

1057 周産期に受けた身体的・性的・心理的暴力事例で読み解く周産期メンタルヘルス<妊娠期編>Ⅱこのケースのように,普段は隠れて見えない身体的部位への暴力の痕跡が医療機関での診察時に偶然見つかり,パートナーからの暴力(intimate partner violence; IPV)の発見に繋がることがあります.ただし,IPV を受けている女性は,医療者に対し自分の受けている被害を控えめに表現することが多いと言われます.被害女性の気持ちの背景には,パートナーからの暴力に対する女性自身のとまどいや恥の感情,否認,自責感や,被害を口外することでパートナーから報復されることへの恐れなどが存在すると言われます1).また,理解しがたいかもしれませんが,暴力を受けてもなおパートナーへの愛情を持ち,パートナーが第三者から責められることを避けたいと思っている女性もいます.医療者側は,女性が被害を過小評価して報告している可能性を認識しつつ,まずは背景にある気持ちに寄り添い,女性との信頼関係を構築することが大切であると思います.なるほど.まずは女性の気持ちに寄り添い,信頼を得ることが優先ですね.もう一つ,気になることがありました.健診時にこの女性は3歳と1 歳の息子さんを連れてきています.普段の息子さんたちへの接し方は,穏やかで特に問題ないように見受けられました.ただ,一度,待合室のキッズスペースで遊んでいた長男を大声で怒鳴りつけているのを見かけました.この方はとてもピリピリした様子で,長男は怯えて竦んだようになり,その後,遊ばなくなってしまいました.普段は大人しい感じの人なので,いつもと違う姿に驚いたのを覚えています.確かに,3 歳の長男に対する厳しい怒り方も気になる徴候ですね.IPV 被害女性は暴力への恐怖や嫌悪から,わが子が少しでも乱暴な物の言い方や態度を示すと過剰に反応し,止めさせようとすることがあります.あるいは,子どもが騒ぐとパートナーから母親である自分が叱責されるために,日常的に子どもを抑圧せざるを得ないというケースも見られます.また,過度に焦燥的になっている背景に,ご自身が妊娠期の抑うつや不安状態に陥っている可能性もあります.周産期において,うつ,不安,心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder;PTSD)を呈する患者はIPV 被害者であることが多いと言われます2).また,子どもに対する被害や,子どものメンタルヘルスへの影響も懸念されます.今後,この女性の精神状態はもちろんのこと,お子さん達の様子も慎重に見守っていく必要がありますね.精神科医助産師精神科医助産師周産期うつ,不安,PTSDを呈する女性に対しては,IPVの可能性を考察する.Point 3IPV現在または過去のパートナー,配偶者による身体的・性的・心理的暴力のこと.Key Word医療者が一方的に支援を押し付けてはならない.女性に話した内容は,本人の同意をとってカルテに記載するが,情報は慎重に取り扱い,パートナーや家族への開示は行わない.Point 2