ブックタイトル聴覚検査の実際 改訂4版

ページ
3/10

このページは 聴覚検査の実際 改訂4版 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

聴覚検査の実際 改訂4版

18第Ⅰ部 聴覚検査の予備知識1)突発性難聴(図Ⅰ- 2 - 11) 突発性難聴は,① 突然発症,② 高度感音難聴,③ 原因不明の3 つを特徴とする疾患である.診断基準の参考事項として,「純音聴力検査での隣り合う3 周波数で各30 dB 以上の難聴が72時間以内に生じた場合」という定義が示されている(ただし,急性低音障害型感音難聴と診断される場合は除く). 一側性の場合が多いが,まれに両側性に同時罹患する例もある.原則として再発しない.難聴に加え耳鳴を伴う例が多く,また約半数にめまいを伴うとされる.原因に関してはいまだ明らかとなっていないが,ウイルス感染,循環障害など複数の病因が推定されている. 突発性難聴に対する治療法としては,副腎皮質ステロイド剤,血管拡張薬,代謝改善薬,ビタミン製剤,高気圧酸素療法など,内耳循環障害やウイルス感染などによる炎症抑制を想定した治療が行われているが,エビデンスの高い効果的な治療方法は確立していない.予後(治療効果)に関しては,約1/3 の症例で治癒が望めるが,1/3 の症例は部分回復にとどまり,1/3 の症例では不変で難聴が残存することが知られている.また,予後(治療効果)に関連する因子としては,年齢,治療開始までの日数,治療前の聴力の程度,めまいの随伴の有無,糖尿病や高血圧の有無などの因子が報告されている.特に治療開始までの日数に関しては影響が大きく,治療開始が遅れるほど聴力予後が悪くなることが報告されておりⅠ-6, 7),早期治療が重要な疾患であると言える.2)急性低音障害型感音難聴(図Ⅰ- 2 - 12) 急性低音障害型感音難聴は,診断基準において,① 急性あるいは突発性に耳症状(耳閉塞感,耳鳴,難聴など)が発症,② 低音障害型感音難聴,③ めまいは伴わない,④ 原因不明と定義された突然発症する低音域の感音難聴である.従来より,突発性難聴と診断される症例の中に,低音部の感音難聴を主な症状とする疾患が報告されており,また,突発性難聴と異なり比較的予後良好であることより,突発性難聴とは異なる病態の疾患として提唱がなされ,2000 年に急性高度感音難聴に関する調査研究班により診断基準(案)が作成され,独立した疾患として定義され-20 125 250 500 1000 2000 4000 8000-100102030405060708090100110120聴 力 レ ベ ル周 波 数(Hz)(dB)図Ⅰ - 2 -11 突発性難聴症例の聴力像(例)-20 125 250 500 1000 2000 4000 8000-100102030405060708090100110120聴 力 レ ベ ル周 波 数(Hz)(dB)↑図Ⅰ - 2 - 12 急性低音障害型感音難聴症例の聴力像(例)