ブックタイトル神中整形外科学 23版 上巻
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神中整形外科学 23版 上巻
た.この発表に当たっては,徹底して患者の予後調査を行い,調査のために教室員は全国各地はいうに及ばず,遠く朝鮮の京城まで派遣された.また,関節形成術においては,中間挿入膜JK(神中・河野)膜による術式を開発し,全国で広く用いられて拘縮に悩む患者に福音をもたらした. リハビリテーションの研究の礎を築いた功績も大きい.第二次世界大戦のために,わが国には戦傷による身体障害者が激増した.政府もそれまでの廃兵という呼称を,傷痍軍人と改め,大阪と九州の小倉に傷痍軍人職業補導所を開設した.戦傷者の職業復帰を目的としたこの施設の運営に熱心に協力し,その成果を昭和18 年の日整会の特別講演で「戦傷肢体不自由者職業補導の医学的経験」と題して発表した.また,昭和25 年の退官のころ,リハビリテーション施設の充実と,PT,OT の導入を力説したが,これは後輩により実現された. そのほか,骨折治療の近代化,義肢・装具の開発,整形外科治療器材の開発など整形外科学全般にわたる膨大な業績を残した. 教育者としても驚くほどの情熱をもっていた.学生の臨床講義には周到な準備をもって臨み,特に講義前の数日間は寝る時間も惜しんで講義原稿を用意した.初版「神中整形外科学」は,膨大な講義原稿を整理して完成させたものである.本書はわが国の整形外科のバイブルとして全国に普及し,多くの医学生や整形外科医に読まれるようになった.また,神中先生の教授時代には,多くの教室員が召集を受け,各地の軍の病院や戦地に赴いた.赴任地には図書館などあるはずもなく,教室員は患者を前にして大変困ったが,その話を耳にした神中先生は,関節や骨折の手術を自分で丁寧に描いたものをカメラで撮影し,説明文を謄写版で印刷して,毎月,応召先の教室員に送った.これがのちに整理され,名著「神中整形外科手術書」として出版されたのである. 昭和25 年に学士院会員になられ,同年九州大学整形外科教授を退官,大阪厚生年金病院院長に就任されたが,昭和28 年に逝去された.第2 代神中正一教授退官の後,九州大学整形外科学教室の運営は,第3 代天児民和教授,第4 代西尾篤人教授,第5 代杉岡洋一教授,第6 代岩本幸英教授に引き継がれていった.第1 章 文 献1) 天児民和:ギプス包帯の発明.臨整外,( 4):12,1969.2) 天児民和:日本整形外科学会50 年の歩み.日整会誌,特別誌,1977.3) 天児民和:Bone Setterから整形外科へ.臨整外,( 18):2,1983.4) 天児民和:整形外科を育てた人達.九州大学整形外科学教室同窓会編,医学書院,1999.5) 阿知波五郎,三木栄:人類医学年表.思文閣,1981.6) Biesalski K:Wesn, Grenzen und Ziele der Orthopadie. Zeitschr Orth Chir,( 55):1, 1931.7) Bonola A:Ricerche sulla vita, le opere ed ilritratto de Nicolas Andry. Chir Org Mov,( 22):385, 1937.8) 富士川游:日本医学史.1904.9) 蒲原 宏:日本近代整形外科の生れるまで,整形外科,( 13):1962.10) Haglund P:Orthopadie als Arbeit?und Lehrfach. Deutsch Orth Ges,( 19)Kongress, 1924.11) 神中正一:整形外科の父Nicolas Andry.外科,( 2):749,1938.12) 川嶌眞人:田代家と中津藩.整形外科,( 32):1122,1981.13) 高木憲次:整形外科の進歩とクリュッペルハイム.第9 回日本医学会総会誌,97,1934.14) 田代義徳:整形外科に関する追想談.東西医学大観,13,1930.15) 田代義徳:整形外科の説.外科,( 2),1938.16) 蒲原 宏:日本整形外科学会の相律まで ―近代日本整形外科成立前史―.日本整形外科80 年史.社団法人日本整形外科学会編,2006.17) Valentin B:Geschichte der Orthopadie. Georg Thieme, Stuttgart, 1961.日本における整形外科の歴史13