ブックタイトル上肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

上肢臨床症候の診かた・考え方

3.離断性骨軟骨炎139思春期・青年期(スポーツ障害・外傷含む) 編 肘関節・前腕部Ⅱ③ CT,MRI や超音波検査(エコー)も有用であるが,目的に応じて選択しなければ意味がない.初期例の検出には超音波検査が有用である.MRI は骨成分が乏しく軟骨成分に富んだ遊離体の検出には適しているが,病期判定や治療法の選択に関しては有用ではない.むしろCT のほうが病巣の大きさ,深さや硬化の有無,遊離体の有無,局在(特に腕尺関節内)(図3)や大きさの把握に有用であり,活用すべき検査法である.本症例の確定診断単純X 線,CT で小頭に透亮像がみられたことから離断性骨軟骨炎の初期と診断した.単純X線やCT で修復が確認できるまで投球中止を主体とした保存療法を行うことを指示した.具体的には,投球はもとより打撃や腕立て伏せ,鞄の所持なども禁じた.グラウンドではトンボ引きや道具の片づけも罹患側ではしないようにし,ランナーコーチャーだけを許可した.ポイント 病期による治療法選択では,初期と進行期では保存療法が第一選択となる.症状を有する終末期と保存療法に抵抗する進行期では手術が考慮される.投球中止を主体とした保存療法により初期では90%以上,進行期では50%程度に修復が見込める .(松浦哲也)参考文献1) 松浦哲也:単純X 線,CT の意義と実際.岩瀬毅信他編:よくわかる野球肘 離断性骨軟骨炎,p.62─74,全日本病院出版会,2013.2) 岩瀬毅信他:上腕骨小頭骨軟骨障害.柏木大治編:整形外科MOOK 54,p.26─44,金原出版,1988.3) 松浦哲也他:肘関節骨軟骨障害の病態診断における再構成CT の有用性.整スポ会誌,22(2):204─209,2002.4) Matsuura T, et al.:Conservative treatment for osteochondrosisof the humeral capitellum. Am JSports Med, 36(5):868─872, 2008.初期進行期終末期図2  単純X 線病期分類図3   CT で明らかとなった腕尺関節内の遊離体