ブックタイトル上肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

上肢臨床症候の診かた・考え方

138第3 章 肘関節・前腕部の臨床診断各論3.離断性骨軟骨炎問診(臨床経過)11 歳男児.8 歳から野球を始め,現在のポジションはショートである.2 ヵ月前から投球動作で右肘痛を自覚するようになった.疼痛は内側に生じている.1 ヵ月間投球中止していたが,再開したところ痛みがあるので来院した.ポイント 離断性骨軟骨炎は症状に乏しいことが特徴である.内側上顆障害による内側痛で受診した際に偶然発見されることが多いので,成長期の野球選手を診察する際には常に念頭に置くべき疾患である.身体所見右肘関節の可動域は,左肘に比べて伸展で10°の制限を認めた.屈曲制限はなかった.内側上顆下端に圧痛があり,外反ストレステストで内側に疼痛が誘発された.ポイント 離断性骨軟骨炎による症状には,腕橈関節の圧痛や外反ストレステストによる外側痛があるが,病期が進行するまではこうした所見を有する例は少ない.逆に身体所見で明らかな異常がみられる場合には,病期が進行していることを想定しなければならない.検査手順のプランニング両肘関節の単純X 線検査を行った.撮影法は,肘45°屈曲位正面像,側面像と30°外旋斜位像の3 方向を選択した.45°屈曲位正面像と30°外旋斜位像にて右側で左側に比べて小頭の不整透亮像がみられ,病期分類の初期と診断した(図1).さらにCT 検査を行い,病巣が比較的狭くて浅く,遊離体も存在しないことを確認した.MRI 検査は行わなかった.ポイント① 離断性骨軟骨炎では内側上顆障害(リトルリーグ肘)同様,45°屈曲位正面像を撮影する.小頭は上腕骨の長軸に対して40?50°前傾し,障害が前方外側に好発するため,障害部のtangential view となる45°屈曲位正面像が有用である.通常の伸展位正面像では,障害部が後方の健常部と重なって撮影され,異常像が見逃されたり,病期を見誤ったりする可能性がある.また,30°外旋斜位像は小頭の側面像の代用であり,肘関節を完全伸展させて前腕を回外位にし,肘関節をカセッテにのせ,管球を上から当てるようにして撮影する.② 治療法を選択するうえで単純X 線病期分類は重要であり,透亮像が特徴的な初期,離断像の進行期,遊離体を有する終末期の3 期に分けることができる(図2).それぞれの病期は骨年齢とも密接に関連しており,小頭骨端線の成長段階は初期では癒合開始前後,進行期では癒合中,終末期では閉鎖後であることが多い.45°屈曲位正面30°外旋斜位図1  離断性骨軟骨炎の単純X 線像肘45°屈曲位正面像で小頭の透亮像(→)と内側上顆の離断像(○),30°外旋斜位像で小頭の透亮像(→)を認める.