ブックタイトル上肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

上肢臨床症候の診かた・考え方

1.腱板断裂(小?中断裂)79中・高齢期編 肩関節・上腕部検 査手順や次回受診の Ⅰプランニング肩関節の単純X 線は,正面像,軸写像,肩甲骨Y 撮影の3 方向を撮影した.本症例では明らかな骨傷を認めず,骨頭の上方化や大結節の不整,肩峰下骨棘も認めなかった.MRI をオーダーし,次回の外来受診を指示した.ポイント 腱板断裂に特徴的な単純X 線所見としては,骨頭の上方化や大結節の不整,肩峰下骨棘などが挙げられるが,すべての症例に必ず認めるわけではなく,断裂の大きさや断裂を生じてからの経過によってこれらの変化が生じる.腱板断裂の確定診断はMRI でなされることが多いが,外来に超音波診断装置があればその場で腱板断裂の診断をすることも可能である.本症例の確定診断MRI で棘上筋腱および棘下筋腱を含む腱板中断裂を認めた.腱板構成筋群の筋萎縮や脂肪浸潤はなく,外傷性の新鮮断裂として矛盾はなかった(図2).本症例は関節鏡視下に腱板修復術を行った(図3).ポイント 腱板断裂は不全断裂と完全断裂に分けられ,さらに完全断裂は断裂の大きさで小断裂(<1 cm), 中断裂(1?3 cm), 大(3?5 cm),広範囲断裂(>5 cm)に分類される.腱板断裂は断裂したまま放置すると腱板構成筋群に筋萎縮や脂肪浸潤を生じる.MRI 斜位矢状断で肩甲棘基部が体部と接する一番外側のスライス(Y─view)において判断する.腱板断裂に対する手術治療のゴールデンスタンダードは鏡視下腱板修復術である.断裂の大きさや形態に応じて,重層固定法やスーチャーブリッジ法などの修復方法を選択する.(山本敦史)参考文献1) 高岸憲二:F. 筋,腱,関節唇の損傷 1. 腱板断裂.岩本幸英編:神中整形外科学 下巻,第22 版,p.370─372,南山堂,2004.2) T. S. エレンベッカー:エレンベッカー肩関節検査法,初版,高岸憲二総監訳,西村書店,2008.大結節上腕骨頭大結節上腕骨頭棘上筋a bc棘上筋棘下筋小円筋図2  MR(I T2強調像) 肩甲下筋a:斜位冠状断,b:斜位矢状断(Y-view),c:軸位断矢頭:断裂部ab図3  鏡視下腱板修復術a:断裂部,b:スーチャーブリッジ法による修復後