ブックタイトル上肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

上肢臨床症候の診かた・考え方

26第2 章 肩関節・上腕部の臨床診断総論また日常生活および職業上の障害程度を確認する.日常生活動作(ADL)の障害は,患者が自ら語ることもあるが,具体的に質問しないと明らかにできない場合がある.頭上の棚のものが取れるか,洗濯物が干せるかなどはリーチ機能,口,頭,反対側の腋窩に手が届くか,トイレで下着が上げられるか,ズボンの後ポケットのものが取れるかなどはボディタッチ機能に関する質問である.Ⅲ.視診・触診診察は原則として坐位で行い,上半身は裸になってもらう.衣服着脱の様子を観察することは肩関節診察の第一歩である.ただし女性ではブラジャーをつけたままか,診察着を用意する.前方および後方から,左右を比較しながら観察する.前方からの視診では,まず頚部から鎖骨,胸鎖関節,肩鎖関節をみる.胸肋鎖骨肥厚症では怒り肩になり,両側の胸鎖関節部に骨性膨隆がある.肩鎖関節部での骨性膨隆は変形性肩鎖関節症を疑う.次いで三角筋の萎縮の有無を確認する.三角筋の萎縮は腋窩神経麻痺かC5 障害で生じる.腱板断裂では萎縮することはまずない.腱板断裂,関節リウマチなどでは肩峰下滑液包に滑液が貯留し,肩峰の前外側がふくらんで見える(fluid sign図2a).上腕二頭筋の筋腹が遠位に移動しているときは上腕二頭筋長頭腱の断裂を疑う(Popeyesign 図2b).患者自身に痛いところを指してもらう頚肩部の場合三角筋部の場合肩鎖関節部の場合頚椎運動痛頚椎可動域制限他動的可動域制限肩こり 頚椎疾患YESYESYESNONO棘上筋の筋力低下棘下筋の筋力低下肩鎖関節疾患腱板断裂凍結肩図1  中高年者の肩の痛みの鑑別フローチャート患者自身に痛いところを指さしてもらう.頚肩部を指すときは,頚椎疾患または肩こりである可能性が高い.肩関節の疾患では主に三角筋部をあいまいに示す.肩鎖関節の疾患では痛い場所を指1 本で指すことができる.