ブックタイトル上肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

上肢臨床症候の診かた・考え方

191思春期・成人の診かた編 手関節・手部Ⅲ*超音波MRI,CT,PET など画像診断技術は近年著しく向上しているが,中でも最も進歩したものが超音波であり,高画質化により筋肉,腱,神経などの軟部組織の描出が飛躍的に向上した.低侵襲性で,診察室で手軽に実施することができ,疾患によっては単純X 線で判別不能な小さな骨病変や,炎症の程度を評価することが可能である.手関節・手部では腱断裂,滑膜炎や血腫,軟部腫瘍の存在の診断にも有用である.Ⅵ.その後の検査や次回診察についてのプランニング1. 単純X 線骨折,骨腫瘍,骨化・石灰化の診断に有用である.正確な正側2 方向撮影を行うことが診断のために非常に重要である.関節の撮影では関節面の接線方向にX 線を入射する.不正確な画像では骨折・脱臼を見逃してしまうことがしばしばある.また,必要に応じて両斜位像を追加した4 方向撮影を行う.舟状骨月状骨間靱帯損傷や月状骨周囲脱臼など関節不安定を伴う病態では手関節掌背屈,橈尺屈などの機能撮影が有用である.臨床症状から疑う外傷・疾患に応じて特殊撮影を追加することが肝要である.・ 手舟状骨骨折を疑う場合には正側両斜位4 方向に加え,前腕回内位や手関節尺屈位,指屈曲位で骨折線が描出しやすくなる.Compsonらは,尺屈位正面(PA),側面,45°回内・回外の4 方向に,尺屈位正面(PA)で管球を遠位方向から20°振った撮影を加えた5 方向撮影を推奨している(図24).・ 有鉤骨鉤骨折は外斜位で描出されることもあるが手根管撮影で明らかになることが多い(図25).2. ストレスX 線靱帯損傷を疑う場合にはストレス下のX 線撮影が診断の一助になる.健側との比較を行う.過度のストレスにより損傷を助長する可能性があることに留意する.3. MRI筋・腱,靱帯などのほか,関節においては関節包・滑膜・関節軟骨・軟骨下骨などの描出が可能である.骨髄の描出により単純X 線で診断不能な骨折,骨挫傷の有無や手根骨の阻血性病変(骨20° 20°図24   手舟状骨の特殊撮影 (Compson JP の撮影法)尺屈位正面(PA)で管球を20°遠位に振っている.図25   有鉤骨鉤骨折(手根管撮影)