ブックタイトル下肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

下肢臨床症候の診かた・考え方

130第3 章 膝関節・下腿部の臨床診断各論3.離断性骨軟骨炎問診(臨床経過)12 歳男児.特に誘因なく,以前からサッカー練習後の痛みを自覚していたが,翌日には消失するため放置していた.最近,誘因なく練習中でも痛みが出現.普段どおりの練習量はこなせるが,痛みが継続するため,来院となる.痛みが出る肢位については「よくわからないし,膝全体が痛いような気がする」との返答であった.ポイント① 保護者からの情報が,思い込みや・周囲の誤ったアドバイスにより,必ずしも正確でないこともあり,患児本人の言葉の聴取が重要である.スポーツや学校の話題を入れながら,わかりやすい言葉で質問し,ゆっくりと返答を待つと可能である.② 聴取すべき内容は,非外傷性か外傷性か,急性か慢性か,愁訴の内容(疼痛か動作制限が主),愁訴の誘発される肢位の有無,スポーツ内容と練習時間・頻度である.③ 関節軟骨亀裂の発生や,脱転・転位した不安定病変の場合,明らかな受傷瞬間の自覚,疼痛・引っ掛かり(catching)や嵌頓(locking)などの強い症状出現を有することが多い.しかし,今症例のように明らかな受傷機転がなく,受傷肢位・疼痛の部位がはっきりしない場合,病変部が安定していることが多い.視 診跛行なく通常歩行にて入室.明らかな大腿・下腿の筋萎縮,内外反アライメント異常,左右差,診察台に上がる動作,皮下出血・擦過傷・打撲痕にも明らかな異常は認めなかった.ポイント 小児疾患の場合,疼痛・運動制限の程度の把握には,自然な動作の観察が最重要である.本人の自覚がなくても,動作異常を有することもあり,患部のみならず,入室からの全動作の視診が重要である.前述のとおり,安定病変では,症状は比較的軽度であり,視診で異常を認めることが困難な場合が多い.身体所見関節水腫,関節可動域制限,膝蓋腱付着部の大腿骨側・脛骨側の圧痛,鵞足の圧痛を認めなかったが,内側関節裂隙と膝屈曲位での膝蓋腱内側に圧痛を認めた.他動的関節運動において,礫音なく,内反負荷時の屈伸にて軽度疼痛の訴えを認めた.ポイント 安定病変症例の場合,病巣部で軽度圧痛しかないことが多いのが特徴である.しかし,病変軟骨への大きな亀裂,病変部の異常可動を有する場合や遊離した場合は,関節水腫や, 特定の肢位での痛みやclick,catching,locking といった,病巣部から誘発される機械的刺激が誘因の所見が生じてくる.診察室での検査関節水腫がないため,関節穿刺などの検査は行わなかった.ポイント 不安定病変では,病変辺縁の関節軟骨に機械的刺激が加わるため,黄色透明で白色の小debris を有する関節水腫をきたすことがある.