ブックタイトルベッドサイドの高齢者運動器の診かた

ページ
4/14

このページは ベッドサイドの高齢者運動器の診かた の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ベッドサイドの高齢者運動器の診かた

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

ベッドサイドの高齢者運動器の診かた

112  第Ⅱ章 高齢者運動器疾患の診かた不明であるが,便宜上,原因不明の本態性肩こりと,他疾患に起因する症候性肩こりに分けられる.本態性肩こりでは不良姿勢,過労,精神的ストレスなどが関与して,局所的に筋緊張,虚血,発痛物質の蓄積が生じると考えられている.症候性肩こりの原因としては,頚椎疾患,肩関節疾患,頭頚部疾患(眼科,耳鼻科,歯科関連),胸部疾患(虚血性心疾患など),腹部疾患(胃・十二指腸・肝胆膵疾患など),更年期障害などがある.【治療】薬物療法,物理療法,運動療法,トリガーポイント注射,神経ブロックなどが行われる.心身医学的アプローチが必要な場合もある.【専門医への紹介の基準】頚椎での神経圧迫が疑われる場合は画像検査を勧める.筋骨格系の疾患で説明できない頑固な肩こりの場合は,悪性腫瘍(肺癌,肝臓癌など)も疑い精査を勧める.■肩関節周囲炎(五十肩)  adhesive capsulitis, frozen shoulder統一された定義はないが,50 歳代を中心にした中高年者に,明らかな外傷なく肩の痛みと可動域制限(関節拘縮)を生じるものをいう.病因は不明であるが,加齢による軟部組織(腱板,上腕二頭筋長頭腱など)の退行変性を基盤として,肩峰下滑液包や肩甲上腕関節に炎症性病変を生じ,関節包が短縮して肩甲上腕関節の運動制限を生じると考えられている.【臨床像】40 ?60 歳代に多く,徐々に肩の痛みと運動制限をきたす.痛みは寒冷時,夜間に強く,上腕や肘に放散する.肩関節の運動は外旋・内旋を含めてあらゆる方向に制限される.画像検査では本症に特異的な所見はない.典型的な経過としては,① 痙縮期freezing phase(痛みのために自動運動が制限される),② 拘縮期frozen phase(関節包の伸縮性低下のため他動運動が制限される),③ 回復期thawing phase の3 つの病期がある.1 ?2 年で日常生活に支障がなくなることが多い.【治療】保存治療を行う.生活指導,運動療法(p.310 参照)が主となるが,レーザー,非ステ図10 lift-off test手背を腰椎下部に当てた肢位をとり(a),手を身体の後方に浮かせるよう指示する (b).肩甲下筋腱断裂では身体から手を離すことができない.a b 図11 belly press test手掌を腹部に当て,肘を前額面上に置いたまま腹部を押すように指示する(a).肩甲下筋断裂では肩関節の伸展で代償しようとする(b).a b