ブックタイトル骨折・脱臼 改訂4版

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概要

骨折・脱臼 改訂4版

1014  各論 第17 章 下肢の骨折? 逆行性髄内釘 retrograde intramedullary nailing1)適 応大腿骨骨幹部骨折に対しては順行性髄内釘手術が標準的な治療法である.しかし同側の大腿骨頚部骨折,転子部骨折,骨盤・寛骨臼骨折,脛骨骨折,膝蓋骨骨折の合併例や両大腿骨骨折例,高度肥満例,多発外傷例などでは逆行性髄内釘手術の適応がある(図17-2-23,24).一方,膝関節内を展開するため,ひとたび感染が起こると化膿性膝関節炎を発症する危険性もあり,また非荷重部ではあるが開窓部の一部が膝関節軟骨にかかるという欠点もある.Swiontkowski が最初に報告して30 年以上経過しているが,正しい手技による逆行性手術が著しい膝関節機能障害を惹起するという報告はない.順行性と逆行性髄内釘手術を比較する報告は後ろ向き研究と前向き研究があるが,おおむね骨癒合に関して差はないという結果である.膝痛は逆行性に多く,股関節周囲の痛みが順行性に多いという報告がある一方,膝痛の頻度には差はないという報告もある.またBMI が30 を超すような高度肥満例では,逆行性手術のほうが手術時間やX 線照射時間が有意に短かったと報告されている.2)体 位仰臥位でX線透過性の手術台で行う.膝窩部に枕を置き膝関節を軽度屈曲位とする.3)挿入点の作製膝蓋腱内側縁に沿って切開を加える.膝蓋腱縦切開でもよい.関節包を切開し,X線透視装置観察下に挿入点作製用のガイドワイヤーを前後像で顆間窩中心,側面像でBlumensaat line の前縁から骨幹軸に沿って刺入する.プロテクションスリーブを使用して膝関節軟部組織を保護しつつ中空ドリルで挿入点を開窓する.4)整復およびガイドワイヤーの挿入遠位骨片の中心からガイドワイヤーを挿入できるため,整復は順行性より容易である.縦長楕円形像:骨長軸方向の入射角のズレ横長楕円形像:骨横軸方向の入射角のズレ正円形:正しい入射角図17-2-22 遠位横止めスクリュー孔のイメージ像