ブックタイトル国立がん研究センターの乳癌手術

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概要

国立がん研究センターの乳癌手術

 早期発見乳癌が多くなりかつ乳癌に対する集学的治療が当然となり,局所療法としての手術は縮小化が進み,乳房温存手術がスタンダードとなって久しい.また,腋窩郭清はセンチネルリンパ節生検の普及に伴い,次第に行われなくなった.しかし,これら縮小手術は決して手技が簡便になったということではなく,術前癌の広がり範囲推定に始まり,意図した範囲をいかに正確に切除するか,センチネルリンパ節をいかに同定するかなど,以前より手術手技は格段に高度化しており,繊細な画像応用も必要とされている.また,若い学徒はときに必須となる腋窩廓清や乳房切除などは,逆に不慣れとなっている.さらに,最近では主に美容の観点から,皮膚温存乳房切除術,乳頭乳輪温存乳房切除術,乳房再建術,内視鏡的乳房切除術など種々の術式が導入されるようになり,手技が煩雑化している.乳腺外科医はこれらの術式に精通していることが求められるが,なかなかすべてを網羅するのは困難である. 木下先生率いる国立がん研究センター中央病院乳腺外科は,乳腺外科エキスパートの集団である.彼らが渾身の力を込めて書いた本書は,手術手技はもとより術前画像診断,合併症を含めた術後管理など,乳癌手術に関するすべての事柄が微に入り細にわたり書かれている.例えば断端陽性になった場合の追加切除方法や,BD領域における温存術後変形の避け方,術後クリニカルパスなど臨床をしているとかならず行き当たる細かい点も,最新の事項を含めて記述されている.図もきれいでわかりやすいものが多用されており,術式を直感的に理解するのに役立っている.図を眺めるだけでも要点は理解でき,多忙な医者には嬉しい. 手術手技は,同じ術式でも学んだ施設により大変異なることが多い.いわゆる流儀であるが,ほかの流儀を知るという意味では,本書は乳腺外科初学者はもとより,すでに多くの経験をつんだ医師でも参考になることが多い.本書を参考に,自分で納得できる術式を完成させ,かつ最適な術式を目の前の患者に適応できれば術後の患者満足度は高まるであろう. 本書は乳癌手術書の決定版ともいえるものであり,外科医,形成外科医,放射線科医,病理医,研修医,看護師,技師など乳癌手術に携わるすべての人にお勧めしたい.  2016 年春北里大学北里研究所病院ブレストセンター長帝京大学医学部客員教授慶應義塾大学医学部客員教授池田 正推薦のことば