ブックタイトル肛門疾患

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概要

肛門疾患

新たな部位を定義した.1) 皮下隙(ⅠL:subcutaneous space) 肛門上皮と内括約筋の間に存在するpotential space を皮下隙とする.外痔静脈叢や豊富なリンパ管網が含まれる(図2-20,21).2) 粘膜下隙(ⅠH:submucous space) 肛門柱部の粘膜と内括約筋の間に存在するpotentialspace を粘膜下隙とする.皮下隙と粘膜下隙の高さの境界は歯状線であり,この中には内痔静脈叢や豊富なリンパ管網が含まれており,ここが内痔核の母床となる(図2-20,21).3) 括約筋間隙(Ⅱ:intersphincteric space) 内括約筋と外括約筋との間に存在するpotential spaceを括約筋間隙とする.歯状線より下方を低位括約筋間隙(ⅡL:low intersphincteric space),上方を高位括約筋間隙(ⅡH:high intersphincteric space)とする.ここは連合縦走筋が走っており,肛門腺がこの腔に及んでいることが多いため,痔瘻の発症と関連が深いこともすでに述べた(図2-20,21).4) 肛門周囲隙(ⅡL:perianal space) 前述したように括約筋間隙を通る連合縦走筋は皮下外括約筋を10 層程度に分けて貫通し皮膚まで到達するため,皮下外括約筋の筋束の間およびその周囲はpotential spaceになる.その部位を肛門周囲隙とする. 肛門周囲隙の前方は浅会陰横筋の後縁で,外側は坐骨,後方は尾骨にまで及ぶ.上方の境界は横中隔である. 肛門周囲隙は低位括約筋間隙と連続している.なおこの領域に存在する脂肪組織は細かく分葉して密につまっており比較的硬い(図2-20,21).5) 坐骨直腸窩(Ⅲ:ischiorectal fossa) 坐骨直腸窩は,後方は横中隔,前方は尿生殖隔膜より深層にあって,複雑な形状をしている(図2-22,23). この隙の内側は,肛門管の周囲にある外括約筋の浅部から深部にかけて,肛門管を取り囲む肛門管周囲筋膜で,この筋膜は引き続き上外側へ向かい,肛門挙筋の下面(肛側)肛門挙筋上隙肛門挙筋(恥骨直腸筋)肛門挙筋(腸骨尾骨筋)連合縦走筋内括約筋皮下外括約筋高位括約筋間隙粘膜下隙皮下隙内閉鎖筋高位坐骨直腸窩Alcock 管坐骨直腸窩中隔(SIF)低位坐骨直腸窩外括約筋低位括約筋間隙と肛門周囲隙横中隔図2-20 骨盤部の模式図(前頭断)坐骨直腸窩中隔(SIF)はAlcock 管と肛門管との間に張る結合組織の膜である.肛門尾骨靱帯肛門挙筋上隙肛門挙筋(恥骨直腸筋)皮下隙粘膜下隙高位括約筋間隙後方深部隙(PDS)内括約筋縦走筋低位括約筋間隙と肛門周囲隙Courtney 腔深外括約筋浅外括約筋横中隔皮下外括約筋肛門挙筋(腸骨尾骨筋)図2-21 骨盤部の模式図(正中矢状断)図2-19 骨盤出口筋の構成* この筋の骨盤腔側が「上尿生殖隔膜筋膜」で会陰側が「下尿生殖隔膜筋膜」である.骨盤隔膜も同様に「上・下骨盤隔膜筋膜」で覆われる.腸骨尾骨筋恥骨尾骨筋恥骨直腸筋浅会陰横筋球海綿体筋尿生殖隔膜筋*=尿道括約筋+深会陰横筋坐骨海綿体筋尾骨筋肛門挙筋後会陰筋(外括約筋のこと)前会陰筋骨盤隔膜会陰筋骨盤出口筋28 第2 章 肛門の解剖