ブックタイトル症例から学ぶ 戦略的慢性疼痛治療
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症例から学ぶ 戦略的慢性疼痛治療
34 病態による痛みの分類 痛みは常に悪者扱いされているが,もともと危険から身を守る生体の大切な防御機能であり,痛みを感じるからこそ,刺激から逃れようとする反射を惹起し,身体の安静を保ち,異常状態の回復を図ろうとする.痛みを感じなければ身体に危害が加わっても認識できずに感染を増悪し,成長を妨げ,生命の危機を招く.人が長生きできるのは痛みを感じるからであるといっても過言ではない.このような生体の防御反応としての痛みは,症状としての痛み(警告信号としての痛み)であり,一般的には急性痛と呼ばれ,傷害が軽快すれば消失してしまう症状である.「喉元過ぎれば熱さ忘れる」というように,解決する痛みといえよう.ただし,すべての痛みがこのようにうまく解決するわけではない.身体が痛み警告を発したときに適切な対応ができないと,傷害が治癒するべき時間を超えても痛みが持続することがある.いわゆる慢性痛と呼ばれる厄介な痛みである.痛覚の中枢経路が促進されたり再構築されたりするため,さらに痛みが複雑になることも明らかにされている.慢性痛に移行してしまうと,壊れた信号機がいつまでも赤や黄色に点滅したままのような状態となり,痛みの部位の緊張を高めたままその範囲を拡大して複雑に増悪する.この痛みに警告信号の意味はなく,体にとって無用の長物である. 病態により痛みを大きく以下の3つに分類することができる.痛みのアセスメントを行う際に参考にすると便利である. 炎症・腫瘍などで周囲組織の壊死・感染などの侵害刺激により痛覚受容体が興奮し生じる痛みで,組織損傷の程度と一致し,神経線維自体の損傷はない.① 体性痛 体性の一次求心性ニューロンの活性化に関連して起こる痛みである.体性痛の神経支配は体性知覚神経と同一であるため,比較的局在が明確で,鋭い痛みとされている.創傷,骨折,骨転移の痛みなどのように,体動により増強することが特徴の一つである.体性痛の治療には,非麻薬性鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)や鎮痛補助薬,神経ブロックなどが適応となる.しかし,安静時痛がない場合は,積極的に安静を保つことが最も有効な除痛法のこともある.患者の状態により種々の薬剤や方法を選択することは当然のことである.また,鎮痛薬を内服するとすべての痛みが改善すると思い込んでいる患者には,「どんなにたくさんの痛み止めを飲んでいても,包丁で手を切れば痛いですよ」と説明すると納得されることが多い.a.侵害受容性疼痛3 急性痛と慢性痛4 病態による痛みの分類