ブックタイトル症例から学ぶ 戦略的慢性疼痛治療

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症例から学ぶ 戦略的慢性疼痛治療

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症例から学ぶ 戦略的慢性疼痛治療

2A  慢性痛(慢性疼痛)治療との向き合い方慢性痛(慢性疼痛)治療とのA 向き合い方 痛覚は生体に対する危機を感受し,生体を防御するための警鐘であり,味覚・聴覚・視覚・触覚など,外部からの情報(おいしい・まずい・心地よい・美しいなどの感情)を生体に提供する感覚とは異なる.なぜなら,好き嫌いは別として,痛覚以外の感覚は共有することが可能であるが(同じものを見たり,聞いたり,味わったりできる),痛みはその人しか感じられないため,他者と共有できない評価困難な感覚といえる.この痛みを国際疼痛学会は「痛みは実際のまたは潜在的な組織損傷を伴う不快な感覚的・精神的な経験」と定義している1).この定義により「痛みは感覚か? 情動か?」という疑問に対し,その両方(両面)が痛みであることが明文化された.さらに組織の損傷が明確でなくても,痛みは存在する考えが明らかになり「“患者が訴える痛み”が痛みである」とされるようになった. さらに痛みは,「侵害受容,痛み知覚,苦悩,痛み行動」の4層構造をもつといわれている(Loeser JDによる痛みの多層モデル).侵害受容とは,侵害刺激により,侵害受容器に電気インパルスが生じることである.これが,複数のニューロンを経由し,大脳皮質に到達したときに痛みとして認識され(痛み知覚),その痛みが引き起こした驚愕・不安・恐怖などが「苦悩」となる.そして,苦悩が引き起こすさまざまな言語的・非言語的表現および痛みを回避するための行動を「痛み行動」という. 紀元前,アリストテレスは痛みを「快感とは逆の情緒・情動」としてとらえていた.しかし,17世紀にデカルトは痛みを感覚としてとらえた.ここから「皮膚には特有の痛み受容器があり,そこに加えられた刺激は特有の伝導路を伝わり,脳内に存在する痛み中枢に達することで,痛みとして知覚される」という痛みの特異性理論が生まれた.その後,現在まで多くの研究がなされ,ゲートコントロール説・中枢性パターン生成理論・神経マトリックス理論など,種々の理論が展開されてきた.そして痛みは,知覚的側面と情動的側面の融合した複合体として考えられるようになってきたのである.1 痛みの概念2 痛みの知覚的・情動的側面