ブックタイトルベッドサイドの新生児の診かた 改訂3版

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概要

ベッドサイドの新生児の診かた 改訂3版

29? ? Ⅱ 分娩時の胎児心拍数モニタリング 胎児にとって出産は,子宮収縮を原動力にした外界への旅である.この人生初めての旅のゴールには,酸素と光と音と祝福の洪水が待ち受けている.しかし,旅は必ずしも安全ではない.強い圧迫を受けたり,狭小な通路に阻まれたり,幾多の困難に出会うこともある. この旅の安全を見守ることが,産科医師や助産師の役割で,分娩監視装置による胎児心拍数モニタリングで得られる胎児心拍数陣痛図(cardiotocography:CTG)は,その大きな助けとなる. 本項では,胎児心拍数(fetal heart rate:FHR)がどのように調節されているか基本から解説し,実際の症例をもとにCTG の判読について述べる. 心拍数の調節は延髄の心臓調節中枢が担う(図Ⅰ?Ⅱ?1).心臓調節中枢から交感神経(星状神経節)刺激を介し,心拍数を増加させ,血圧を上昇させる.一方,副交感神経(迷走神経線維)刺激を介して,心拍数を減少させ,血圧を低下させる. 身体にはこれらのシステムを作動させるセンサー,すなわち化学受容器と圧受容器がある.これらのセンサーは頸動脈と大動脈に存在し,バイタルオルガンである心臓と脳を保護している(図Ⅰ?Ⅱ?1). 酸素分圧の低下,二酸化炭素の増加,pH の低下など低酸素状態やアシドーシスになった血液が頸動脈,あるいは大動脈に流入すると,化学受容器が異常を察知し,心臓調節中枢にシグナルを送る.このシグナルに対し,心臓調節中枢は交感神経刺激を介して,心拍数,血圧を上昇させ,少しでも多くの酸素を臓器に提供しようとする. 一方,急激な血圧増加は,脳や心血管の障害を引き起こすが,それを防ぐため圧受容器が働?Ⅱ? 分娩時の胎児心拍数モニタリング1. 胎児心拍数の調節? ?心拍数の調節は延髄の心臓調節中枢が担う.心臓調節中枢は,頸動脈と大動脈にある化学受容器と圧受容器のシグナルを受け,交感神経と副交感神経の刺激を介し心拍数を調整し,循環動態の恒常性を維持する.? ?子宮内が低酸素環境に曝露されると胎児は酸素消費量を抑え(胎動,一過性頻脈消失),心拍数を増加させ(頻脈),酸素供給を維持しようとする.さらに,この状態が持続すると有害な一過性徐脈(遅発,遷延一過性徐脈)が出現し,酸血症に至れば自律神経系は機能を失い(基線細変動の消失),深刻な徐脈(心機能抑制)に陥る.? ?胎児心拍数陣痛図(CTG)は分娩中これらの情報を与えてくれる唯一のツールで,その判読は極めて重要である.要点