ブックタイトル専門医がリードする小児感染症ケースカンファレンス

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概要

専門医がリードする小児感染症ケースカンファレンス

20. けいれんをおこした1 111浮腫が進行するため,呼吸循環管理を行いながら,迅速に対応する必要である.解 説 入院時,脱水所見はなく,低血糖や電解質異常を認めなかった.水様性下痢を認めていたため,便検査を行い,便中ロタウイルス抗原陽性からロタウイルス性胃腸炎と診断した.胃腸炎中に,有意な発熱がない状態で,短いけいれんが群発したことから,臨床的に軽症胃腸炎関連けいれんを疑った.ただし,来院時は意識清明ではなかったため,中枢神経感染症を鑑別するために,頭部CT と髄液検査を行った.ともに明らかな異常はなく,カルバマゼピンを経口投与し,経過を観察した.[軽症胃腸炎関連けいれん]1) 軽症胃腸炎関連けいれんは,軽度の胃腸炎に罹患した乳幼児に認められる無熱性けいれんである.発症年齢のピークは1 歳代であり,生後6 ヵ月から3 歳までに発症することが多い.胃腸炎の原因は様々であり,ロタウイルスが半数を占めるが,ノロウイルスnorovirus やアデノウイルスadenovirus でも生ずる.ロタウイルス性胃腸炎では,罹患児の約3% でけいれんを認めたという報告がある2).1. 症 候 けいれんは胃腸炎症状の発症から1~6 日(平均2~3 日)で生ずる.けいれんの様式は全身性のけいれんであるが,部分発作の二次性全般化と考えられている.ほとんどのけいれんが3 分以内であるが,70~80% の症例で複数回のけいれんが認められる.なお,本けいれんでは,啼泣や痛みを伴う処置の際に発作が誘発されることが多い.けいれんがおこる期間は初回けいれんから1~2 日間であり,多くの場合,24 時間経つとけいれんはおこらなくなる.2. 診 断 疾患に特異的なマーカーはなく,“乳幼児の軽症胃腸炎”と“発作後の回復が良好な無熱性けいれん”という組み合わせから臨床的に診断される.鑑別として,熱性けいれん,てんかん,良性乳児けいれん,脱水,低血糖,電解質異常,中枢神経感染症が挙がる.3. 検 査 一般的に頭部CT やMRI での異常,非発作時の脳波異常は認めない.ただし,近年,MRI の拡散強調画像で脳梁膨大部に拡散強調画像で一過性に異常所見を認めたという