ブックタイトルイラストを見せながら説明する 子どもの病気とその診かた

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概要

イラストを見せながら説明する 子どもの病気とその診かた

34 第Ⅰ章 症 候解 説 小児の日常診療において,嘔吐はしばしばみられる症状の1つであり,生理的なものから緊急処置が必要なものまで,さまざまな疾患にみられる.特に乳児では嘔吐を認めることが多く,幼若なほど緊急対応を要する場合がある. 嘔吐の診断にあたっては,発症年齢,吐物の性状,経過,発熱などの随伴症状が初期診断の参考となる.診察所見,腹部エックス線検査,超音波検査などの検査所見とあわせて診断を行い,適切な治療を開始する.■原 因 嘔吐の原因となる疾患は多岐にわたり,非常に多い.それらのうち消化器疾患が最も多く,感染症に関わるものとして,胃腸炎,虫垂炎,腹膜炎などがあり,通過障害など機能的なものとして,先天性消化管閉塞,食道噴門弛緩症,肥厚性幽門狭窄症,腸回転異常症,腸重積,ヒルシュスプルング病などがある.その他,脳炎,髄膜炎,脳腫瘍,頭蓋内出血,片頭痛などの中枢神経疾患やケトン血性低血糖症,先天代謝異常症,糖尿病性ケトアシドーシスなどの内分泌・代謝疾患でも嘔吐をきたすことが多い.新生児?乳児早期は,生理的にも嘔吐が認められ,年長児では心因性嘔吐の頻度が増えてくる.■よくみられる症状 嘔吐の原因診断や対応には,嘔吐の特徴を知る必要がある.まずは年齢を考慮して疾患の好発年齢から考える(表1?4).さらに吐物の性状,食事との関連,頻度などを確認する. 肥厚性幽門狭窄症では,噴水状嘔吐であり,溢乳や食道噴門弛緩症では無力性嘔吐がみられ,いずれも授乳直後に起こる.反復性嘔吐の原因として,脂肪酸酸化障害やミトコンドリア異常などの代謝異常,周期性ACTH-ADH 放出症候群やケトン血性低血糖症などの内分泌異常,片頭痛,自律神経発作,心因性嘔吐,腸回転異常症などがある. 吐物の性状から原因疾患を鑑別することも重要であり,泡沫状の粘稠な吐物は先天性食道閉鎖症,胆汁性の混入吐物はVater 乳頭部より肛門側の腸閉塞など,糞臭のある吐物は下部消化管閉塞や腹膜炎など,血液混入吐物は新生児メレナ,消化性潰瘍,食道静脈瘤など,コーヒー残渣様吐物は,消化性潰瘍,脳炎などで認められる. 嘔吐以外の随伴症状は緊急性の有無からも重要であり,食欲不振,不機嫌,元気がないなどの所見は病的な嘔吐である場合が多い.腹痛(腸重積,急性胃腸炎,虫垂炎,腹膜炎,消化性潰瘍など),下痢(急性胃腸炎,消化管アレルギーなど),腹部膨満(先天性消化管閉塞,腸閉塞,空気嚥下症など),発熱(急性胃腸炎,虫垂炎,腹膜炎,脳炎,髄膜炎,敗血症,尿路感染症など),頭痛(脳腫瘍,1) 初期嘔吐2) 哺乳の拙劣および障害3) 産科的異常① 妊娠中毒症② 新生児仮死4) 頭蓋内疾患① 頭蓋内出血② 脳浮腫③ 核黄疸④ 水頭症5) 消化管の通過障害① 先天性消化管閉塞・狭窄(食道閉鎖・狭窄,気管食道瘻,噴門狭窄,十二指腸閉鎖・狭窄,小腸閉鎖・狭窄,腸回転異常,横隔膜ヘルニア,巨大結腸症,回腸閉鎖・狭窄,直腸閉鎖・狭窄,鎖肛)② カラシアおよびアカラシア,胃食道逆流症③ 胎便栓症候群,メコニウムイレウス④ 新生児仮性腸閉塞6) 呼吸障害① 呼吸窮迫症候群② 先天性喘鳴7) 感染症① 髄膜炎② 敗血症③ 気道感染症④ 中耳炎⑤ 腸管感染症⑥ 腹膜炎⑦ 尿路感染症8) 内分泌・代謝異常① 先天代謝異常(副腎性器症候群,ガラクトース血症,メープルシロップ尿症,高アンモニア血症,乳糖不耐症,など)② 低血糖症③ 低カルシウム血症④ アシドーシス⑤ 新生児メレナ表1 嘔吐の原因(新生児)