ブックタイトルイナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる

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概要

イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる

46Ⅰ 診断推論排尿困難 排尿障害と一口にいっても,排尿困難,尿失禁,頻尿,排尿時痛などがあげられる.高齢男女に共にみられる排尿障害の原因で一番多いのが神経因性膀胱であり,ここではそれをとりあげる. 一般的に神経疾患により下部尿路症状を引き起こすものは神経因性膀胱と総称される1).神経因性膀胱には,① 脳の疾患(脳血管障害,パーキンソン病など),② 脊髄・脊椎疾患(脊髄損傷,多発性硬化症など),③ 末梢神経障害から核下型の神経因性膀胱(糖尿病,骨盤部手術などによる)がある(図7 -1). 脳血管障害では急性期には一般に排尿筋活動低下による尿閉を呈するが,排尿筋活動は回復することが多い.慢性期には排尿筋過活動を認め,頻尿,尿意切迫,切迫性尿失禁など蓄尿症状が出現することが多い2). 脊髄疾患としては仙髄より上位に障害があると排尿括約筋協調不全による排尿障害を生じることが多い1) .脊髄障害による馬尾・末梢神経障害による大脳皮質障害による間脳・脳幹障害による主な原因疾患● 交通事故,労働災害,スポーツ事故などによる脊髄損傷● 脊髄腫瘍・脊髄炎・脊髄卒中● 脊椎症性脊髄症● 脊髄壊死● 二分脊椎● 腰椎ヘルニア・椎間狭窄● 子宮がん・直腸がん根治術後● 糖尿病性末梢神経障害● 脳外傷● 脳卒中(梗塞・クモ膜下出血)● 脳髄膜炎● 脳性麻痺● 大脳の深い病巣出血外傷● パーキンソン病● オリーブ橋小脳変性症● シャイ・ドレーガー(Shy-Drager)症候群主な症状急性期は完全尿閉慢性期などに● 不全尿意あり● 尿意喪失● 排尿筋過活動による尿失禁● 残 尿● 尿意喪失することが多い● 残尿が多い● 溢流性尿失禁や水腎症● 昼間頻尿・夜間遺尿が多い急性期から回復し,リハビリを受ける時期に● 頻 尿● 切迫性尿失禁● 尿意はあるが,排尿不可● 残尿が多い● 介助者による間欠導尿か留意カテーテルが必要発症部位解 説障害が仙髄内に脊髄反射中枢より上位であるため,膀胱は収縮するが,尿道が弛緩せず,DSD(排尿筋・括約筋協調不全)が出現する排尿支配神経自体が直接障害されるので排尿反射が消失し,尿が多量にとどまっても膀胱は収縮することができない脳幹部排尿中枢より上位の大脳が障害されるため,脳幹部排尿中枢に対する随意的コントロールができなくなり,少ない膀胱容量でも排尿反射が作動し,過活動膀胱となる脳幹部排尿中枢が障害されるため,蓄尿・排尿ともに障害が起きる図7-1 神経障害部位別の排尿障害と原因疾患