開業医の外来小児科学 6版

開業医の外来小児科学 6版 page 7/12

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開業医の外来小児科学 6版

434第Ⅴ章 外来でみる主要疾患治 療 健常人の伝染性単核症は自然回復する疾患であり,対症療法のみで治療を必要としない.アデノイド肥大や扁桃腫大の程度が著しく上気道狭窄による呼吸困難がある場合,脾破裂の可能性がある場合はステロイドを使用する場合がある.心筋炎,急性肝不全,溶血性貧血,中枢神経合併症,血球貪食症候群などの重篤な合併症により,ステロイドなどによる治療が必要になることがある.予 後 一般に予後は良好であるが,合併症による死亡例があり注意が必要である.特殊な病型 EB ウイルスは不顕性感性あるいは伝染性単核症といった良性の疾患から,致死的な経過をとることがあるEB ウイルス関連血球貪食症候群,慢性活動性EB ウイルス感染症,蚊刺過敏,臓器移植後リンパ増殖症,X 連鎖リンパ球増殖症候群(Duncan syndrome),腫瘍性疾患であるバーキットリンパ腫などのリンパ腫,上咽頭がん,EB ウイルス関連胃がん,膿胸関連リンパ腫など種々の疾患に関与している. ウイルス関連血球貪食症候群(virus-associated hemophagocytic syndrome:VAHS)は1979 年にRisdall らによって,ウイルス感染に関連して組織球の反応性増殖をきたす病気の1 つとして提唱された.ウイルスではEB ウイルスが最も多く(約40%),他にCMV,単純ヘルペス,麻疹,風疹,水痘帯状疱疹,アデノウイルス,パルボウイルスなど種々のウイルスによって起こる.血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)にはウイルス感染の他に細菌感染,自己免疫疾患,悪性腫瘍に伴うものや先天性・原発性(家族性血球貪食性リンパ組織球症)のものがある.慢性EBV 感染症,X 連鎖リンパ球増殖症,Chediak-Higashi 症候群ではEB ウイルス感染を契機に血球貪食症候群が顕性化する. EB ウイルス関連血球貪食症候群では,EB ウイルスがCD8 + T 細胞あるいはNK 細胞に感染し増殖している.活性化したT 細胞および組織球がインターフェロンγ(IFN-γ),TNF-α,IL-6 などを過剰に産生し,マクロファージが活性化し血球貪食や全身性の炎症反応を引き起こすことが病態に関与している. 症状としては一般に38~39℃の発熱が続き,肝腫または肝脾腫,リンパ節腫脹や発疹がみられる.検査所見としては汎血球減少があり,貧血,白血球減少,血小板減少の3 系統の血球減少があるが2 系統のみの場合もある.肝臓の機能障害,LDH の上昇,凝固異常(フィブリノーゲンの低下,FDP・DD の上昇),血清フェリチンの上昇,トリグリセリドの上昇,血清タンパクの低値がみられる.他にフェリチン,尿中β2-MG,リゾチーム,ネオプテリンがマクロファージの活性化を反映して上昇する.確定診断のためには白血病や再生不良性貧血を除外するためにも骨髄検査が必要である.骨髄とリンパ節,肝臓・脾臓で成熟したマクロファージが,顆粒球,血小板などを貪食し,胞体内に空胞を認める.リアルタイムPCR で血液中あるいは血清中のウイルス量を定量的に測定すると,著明な増加が認められる. 感染細胞のクロナリティをサザンブロット法を用いて調べることにより,病態を解析することができる.重症度はさまざまで自然治癒するものから,時に致死的な経過をとることもある.治column ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)