ブックタイトル放射化学放射線化学 改訂5版

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概要

放射化学放射線化学 改訂5版

112  5 章 放射線化学A. 放射化学と放射線化学 放射化学と放射線化学を厳密に境界づけをすることは難しい.一般的にいえば,放射化学は放射能の特性を利用して放射性元素を研究する学問で,放射線化学は放射線の物質に対する化学作用を研究する学問である.化学作用のなかには,① 気体の電離,② 固体の放射線分解,③ 溶液の化学変化,④ 高分子物質の重合,解裂,⑤ 生体に対する作用,⑥ ホットアトム化学 などが含まれる.このうち高分子物質の重合,解裂などを扱う分野は応用放射線化学,生体に対する作用を扱う分野は放射線生物学として区別することもある.放射線化学とやや似た学問の分野に光化学がある.光化学では,電磁波のエネルギーの小さい紫外線や電離を起こさない可視光線を用い,放射線化学ではエネルギーの大きいα,β,γ線,電子線,X 線その他の粒子線を用いる.B. 放射線化学反応の初期過程 放射線化学反応は,光化学反応の場合と同様に,一次作用と二次作用に分けられる.一次作用は,放射線が物質に衝突し,物質にエネルギーを与え,物質中の原子や分子が電離(イオン化と熱電子の生成)あるいは励起される過程と,さらに生成したイオンや励起種が分解あるいは安定化してラジカルradical や準安定なイオンを生ずる過程である.二次作用は,一次作用で生じたラジカルやイオンが広く拡散して,ほかの分子と衝突し,安定分子に戻ったり,解離して連鎖反応を起こしたりして,最終生成物となる過程である. 放射線が物質中を通過すると,電離された原子や分子および励起された原子や分子がその進行行程に沿って生ずる.それらの集団をスプールとよぶ.その形状や分布は放射線の種類やエネルギーの大きさによって異なる.図5?1 にα線とβ線の飛跡中のスプールの例を示す. スプール内に生じたイオンや励起分子は拡散し,スプールは大きくなりながらやがて二次過程へと進行する.放射線の飛程range の,単位長さ当たりに生1 一次作用