ブックタイトル在宅栄養管理 改訂2版

ページ
4/12

このページは 在宅栄養管理 改訂2版 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

在宅栄養管理 改訂2版

474chapter食事がうまく食べられていない時,その不足分をどのように補うかはいつも頭を悩ませる問題だ.投与経路の選択は一応の基準もあるし,その大まかな根拠もあがっている.経静脈栄養が明らかに感染の面で経腸栄養に劣っていること以外,実際にはそれらのエビデンス自体が金科玉条にするほどのものではないというのが実情である.したがって,一例一例原則には従いながらも,患者や家族の希望に添い,耳を傾けながら投与経路を選択する必要がある.時には,試行錯誤に近いことも必要となる.この章では在宅の現場でどのように栄養投与の経路を選択したらよいのかを考えてみたい.(1)ガイドラインでは米国経静脈経腸栄養学会American Society for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN)のガイドラインでは,図Ⅰ-4-1 のようになっている1).まず,安全に腸管が使用できるかどうかで経静脈か経腸かどうかが決まる.経腸であれば次に嚥下機能によって,経管か経口かが決まり,期間によって経鼻か胃瘻かが決まる.日本静脈経腸栄養学会のガイドライン2)では,4 週間以上の経腸栄養が見込まれれば,消化管瘻を選択し,第一選択は胃瘻となっている.経静脈は2 週間以上必要であれば中心静脈栄養を選択する.これらのガイドラインに従えば,経静脈的な栄養投与は例外的であることがわかる.ある在宅医療の会で講演した時に経口摂取ができない患者のほぼ全員を在宅中心静脈栄養で見ている在宅専門の診療所があることを知り愕然とした.在宅での経腸栄養と経静脈栄養を比べると,経腸栄養では感染のリスクが低い,コストが安い(経腸栄養のコストは経静脈栄養のコストの1/10 である),腸管を使用しているため経口摂取への移行が比較的スムーズであるなどメリットが多く,一方,経静脈栄養では高血糖が起きやすい,感染のリスクが高い,神経系の疾患の長期管理では経静脈栄養で死亡率が高い3),デイサービスやショートステイの受け入れ施設がほとんどない,老老介護で経静脈栄養の管理は困難であるなど,様々な面で経腸栄養を第一に選択すべきことは明らかである.栄養投与経路の選択の実際