ブックタイトル在宅栄養管理 改訂2版

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概要

在宅栄養管理 改訂2版

21chapterはじめに「低栄養」何となくいやな響きをもつ言葉だ.筆者の親の世代にとっては戦時中の芋しか食べられなかった時代を思い出させるだろうし,子供時代から飽食の時代で低栄養などとは無縁であった私たちの世代では,途上国の貧困や南北問題を思い出す人もいるだろう.いずれにせよ,「低栄養」という言葉には良いイメージは全くない.しかし,残念なことに私たちが在宅医療の対象としている高齢者の少なくない数の人々が,現代の日本においても低栄養のリスクにさらされているのだ1).本書の大きな目的の一つは在宅医療の現場で,この低栄養にどのように対処したらよいのかを経験も交えてみなさんに伝えることである.本章では,栄養不足が疑われた時に,どのような病態があり,どう考えればよいのかを概観してゆく.(1)低栄養の病態a.蛋白質・エネルギー低栄養状態protein-energy malnutrition(PEM)在宅医療の対象者はあまり大きな原因なしに,突然食事が食べられなくなるということをよく経験する.風邪を引いたり,転んだりということが原因で全く食欲がなくなってしまい,食べる食事は1 口か2 口だけ.そのような状態,つまり必要栄養量と栄養摂取量との間の負のバランスが一定期間続くと,そのことによって代謝の変化,臓器の変化,筋肉や脂肪の減少などの変化が起きてくる.Protein-energy malnutrition(PEM)とはカロリーおよび蛋白の摂取量不足によって引き起こされるこれらの病態を呼ぶ.PEM は表Ⅰ-1-1 に示したような様々な障害を引き起こすことが知られており2),実際の臨床の場面でも,PEM によって引き起こされている易感染性や褥瘡,さらには認知障害などに遭遇することはまれではない.やっかいなのは,こうした低栄養によって引き起こされている認知障害などの症状が老化や原疾患の増悪と混同され,対処可能であるにもかかわらず見過ごされることが少なくないことである.PEM は痩せが目立つ割に低アルブミン血症などがあまり顕著ではないマラス在宅医療と低栄養