ブックタイトル実践!ケースで学ぶ栄養管理・食事指導エキスパートガイド

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実践!ケースで学ぶ栄養管理・食事指導エキスパートガイド

206 Ⅲ . 患者背景に応じた指導 いまや,わが国の総人口の25%が65 歳以上の高齢者・超高齢者であり,高齢者の栄養管理は非常に重要なものになってきています.高齢者の栄養指導で重要なことは,加齢にともなって生じる骨格筋量の減少とその機能(筋力)の低下,つまりサルコペニア(加齢性筋肉減少症)をいかに食い止め,QOL の低下や虚弱を引き起こさないようにするか,ということです.ここでは,加齢以外に明らかな原因が認められない加齢性(一次性)サルコペニアについて述べていきます.1 高齢者の代謝 エネルギー代謝の面では,加齢にともなって基礎代謝量は低下し,消費エネルギーも減少しています.とくに,65歳を超えるとエネルギー消費量の減少速度は増すともいわれています.一方,脂肪の消化吸収の変化は臨床的には問題にならない程度と考えられており,消化吸収に重要である小腸の吸収面積の維持については,高齢者と非高齢者の小腸を比べると,表面比および絨毛膜の高さにおいて差がないとされています.それゆえ,高齢者では食事をすることで小腸の機能を保つことが重要です. では,蛋白質代謝について考えますと,高齢になると,蛋白質合成を促進する因子への感受性の低下と糖質摂取によるインスリン分泌によって,アミノ酸の蛋白質同化作用が阻害されることなどが知られており,これらがサルコペニアの原因となっている可能性が示唆されます.とくに,蛋白質同化作用が高いとされている分岐鎖アミノ酸のひとつ,ロイシンに対する感受性が高齢者では低下していると考えられるうえ,高齢によるたんぱく質の摂取不足により骨格筋の筋蛋白質合成が低下しているため,骨格筋の減少を引き起こし,サルコペニアへと悪循環が生じます.2 サルコペニアがもたらす負の連鎖 世界保健機関(WHO)が死亡に関与するリスク因子として提示しているなかに「身体不活動」が入っており,これはサルコペニアと強い関連性があることを示しています.図41 - 1 に一連の流れを示します.図のように,一度サルコペニアにより身体活動量が低下すると,その身体不活動がさらなる筋量・筋力の低下を引き起こし,サルコペニアを加速させるといわれています.41 高齢者・超高齢者(サルコペニア)患者指導