ブックタイトル実践!ケースで学ぶ栄養管理・食事指導エキスパートガイド

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実践!ケースで学ぶ栄養管理・食事指導エキスパートガイド

26.膵 炎135 食事中の糖質が消化吸収されると,血中ブドウ糖濃度(血糖値)が高まります.糖尿病における食後血糖の急激な上昇や高血糖の持続(食後高血糖)は血糖コントロールの悪化を招きますが,食事における極端な糖質制限は適切ではありません.したがって,適正な糖質量を確保しつつ食後高血糖を抑制するための食事療法が求められます.近年,食品の食べる順番とその生理機能を考慮することで食後高血糖を抑制できることが明らかとなってきました. 食べる順番を考慮するうえで,日本糖尿病学会「糖尿病食事療法のための食品交換表」にある6 つの食品分類(表1 ~ 6)はきわめて有用です.内容を簡単に説明しますと,表1:穀類やいも類,大豆以外の豆類といったでんぷん食品(おもに主食)表2:果物表3:魚介や肉,卵,チーズ,大豆製品といったたんぱく質と脂質からなる食品(おもに主菜)表4:牛乳,ヨーグルトなどチーズを除く乳製品表5:バターやマヨネーズ,ナッツ類といった油脂食品表6:野菜やキノコ,コンニャク,海藻など食物繊維を多く含む食品(おもに副菜)と分類されています1). 空腹時に米飯やパン,麺類など(表1,主食)や果物など(表2)を摂取すると速やかに食後高血糖を引き起こすため,食事のはじめに食べることは推奨できません.一方で,野菜やキノコ,コンニャク,海藻など(表6,副菜)は糖質含有量がきわめて少ないため,血糖値を上昇させずに食物繊維によって食後血糖の上昇を抑制します2). さらに,魚類や肉類など(表3,主菜)は糖質を含まず,加えて脂質やたんぱく質は,血糖の上昇にあわせてインスリン分泌を増強する消化管ホルモンであるインクレチン(GLP-1 やGIP)の分泌をうながすことが知られています.筆者らは,米飯の前に魚あるいは肉を摂取することで,食後血糖が著明に改善することを明らかにし,このときインクレチン分泌が高まること,さらに胃排泄が抑制されることを見いだしています. 以上のことから食後血糖の上昇を抑制するために,食事の際,食品を食べる順番として,副菜(表6)→主菜(表3)→主食(表1)の順が推奨されます3).実際に,糖尿病患者に対して食事療法の一環として,この食べる順番の教育を行うことで,HbA1c が改善されるという報告もあります4).消化吸収や消化管ホルモンを考慮した食べる順番は,実施が比較的容易です.他の食品や調理方法などの影響についても,さらに検討が必要ですが,新たな糖尿病食事療法のひとつとして興味深いです.今後のさらなる研究によって,糖尿病食事療法をより効果的にする食べる順番の確立が期待されます.文 献1) 日本糖尿病学会 編: 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7 版,2013.2) 金本郁男 ほか:低Glycemic Index 食の摂取順序の違いが食後血糖プロファイルに及ぼす影響.糖尿病,53:96-101,2010.3) 岩崎真宏 ほか,日本糖尿病協会:糖尿病予防および管理のための栄養と運動 ─限られた状況下でできること─,2012.4) Imai S and Kajiyama S:J Rehabil Health Sci,8:1-7,2010.Topics & Key Words食べる順番と血糖値(岩崎真宏  桑田仁司  矢部大介  清野 裕)疾 患 別