ブックタイトル私は咳をこう診てきた

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私は咳をこう診てきた

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私は咳をこう診てきた

─ 26 ─その疾患であるかないかの二つしかないが,私たちにとって,目の前の患者さんが病気である可能性はグラデーションのように分布した帯のある1 ポイントに位置している.検査の結果は,そのポイントを何割か移動させるのに過ぎないのである(図13).その結果から,私たちはその病気であるか否かの可能性の大きさを知り,判断の一助とする.新型インフルエンザが流行したとき,病院でインフルエンザ検査を受けインフルエンザでないことを確認してもらってこい,あるいは仕事をしたいので検査をしてインフルエンザでないことを証明してほしいという患者さんが後を絶たなかったが,それは無理な注文である.なぜならインフルエンザ抗原迅速検査は,感度62%,特異度98%という特性であるからである.感度の高い検査は陰性であるときにその疾患を否定するのに役立ち,特異度の高い検査はその疾患を肯定するのに役立つ,すなわちその頃受診した患者さんたちの期待に反して,抗原迅速検査陰性ではインフルエンザではないといえないが,陽性であった場合ほぼインフルエンザであるといえる,そういう検査法なのである.私たちの頭の中には,受診理由を見たとき,病歴を聞いたとき,身体診察をしたときなど様々なポイントで鑑別診断リストが浮かんでは消えていく.意識するしないにかかわらずそれぞれの疾患の可能性を見積もりながら,その順位を上下させている.そして検査をする前には疾患の可能性の見積もり(検査をする前の可能性の見積もりなので事前確率と呼ばれる)ができているはずであ検査陽性検査陰性疾患あり疾患なしではなくて疾患の可能性検査陽性となった場合検査前図13 検査は白黒の決着をつけるものではない.