ブックタイトル私は咳をこう診てきた

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私は咳をこう診てきた

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私は咳をこう診てきた

─ 11 ─2.咳の章1 まず慢性の咳の例からcase 1.隗より始めよ 76 歳女性 主婦 非喫煙梅雨空が続いていた.咳が半年続くと書かれた問診票を診ながら研修医が,半年も?と驚いた顔をしている.診察を終えた彼から報告を聞き,改めて話を聴く.患者さんはかつて私が長引く咳を解決してさしあげたご婦人の友人だった.いろいろな医者を転々としてもなかなか咳が治らず,彼女から紹介を受けて来院された.私のよく処方する吸入薬も使ったことがあるが,やはりよくならなかったとのことである.半年前の事で,もはやその頃風邪を引いていたかどうかも曖昧になっている.おそらく軽い風邪ぐらいは引いていたかもしれない.医者にかかった記憶がある.薬をもらい風邪が治った頃から咳が始まった.咳の特徴を聴いてみる.当初,咳は一日中出ていたが,そのうち昼間の咳は軽くなり,だんだん夜になってからの咳が多くなった.横になると咳が出てなかなか眠れない日がある.寝てしまえばよいが,身体が温まった頃に咳が出て目が覚めたり,トイレに行った帰り,ひとしきり咳込むことがある.朝方も咳のためにいつもより早く目が覚めてしまう.しかし喘鳴はない.昼間は,温度変化にさらされたときに咳込む.たとえば外出から帰ってエアコンの効いた部屋に入ったときなどによく咳が出る.そのほか電話で話をしていると,咳が出てきてしまって,なかなか話ができなくてつらいこともある.終始,痰は出ない.まとめてみると,風邪の後に始まった,夜間に多く,温度変化や会話で誘発される,痰や喘鳴を伴わない咳である.咳の特徴は咳喘息を示唆する.とすると病歴で確認する必要があるのは,今までに同様のエピソードがなかったかどうかである.季節ごとにあるいは風邪を引くたびに繰り返してきた長引く咳は,気管支喘息などアレルギー性要因の関与を疑わせる.しかし,こんなに咳が長引いたことはないし,子ども時代から今まで咳で悩んだ記憶がないとのことである.百日咳に代表される感染に関連した咳は長引いてもせいぜい8 週間までである.6 か月と聴いた時点でそれらの感染後咳症候