ブックタイトル私は咳をこう診てきた

ページ
10/12

このページは 私は咳をこう診てきた の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

私は咳をこう診てきた

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

私は咳をこう診てきた

─ 115 ─気管支喘息と診断を受けても,適切な治療を受けないうちに年々悪化し,日常生活が著しく制限されてしまう.そうこうしているうち気管支喘息は後戻りできない状態になってしまうことがある.しかし幸い二人のS さんは自分たちの思いが実現するまでに回復できた.一旦回復の軌道に乗り,その治療を継続さえすれば呼吸機能が悪化していくことはない.むしろ場合によっては少しずつ回復しさえすることを私たちはCase15 のT さんで学んだ.しかしここに私たちがどう介入してもその進行を食い止められない疾患がある.それは慢性閉塞性肺疾患Chronic obstructivepulmonary disease(COPD)である.COPD はちょうど定年退職する年齢以降,いわゆる高齢者の疾患である.そのため患者さん自身も,そしてかかりつけの医師たちも疾患とはいっても,年のせいである,仕方がないと片付けがちである.しかし病は歩みを緩めることなく進行し,気がついたときには酸素療法が必要な身体,あるいはそれでも外出のできない身体になっている.COPD は手の施しようのない疾患ではない.もっと早く介入していればある程度の改善は認められるのに,せっかくその大切な時期に受診した患者さんたちに医師が投げかける言葉は「治らない」の一言である.絶望の淵にたたずむ患者さんたちを救う手立てはあるのであろうか?あるいはCOPD 診療にプライマリ・ケア医の役割はあるのであろうか?症例を呈示しながら考えていきたい.Case 20.息切れは紫煙と共に 67 歳男性 元校長 喫煙K さんは元有名学園校長.1日20 本のたばこを46 年前に吸い始め,退職した今もなお,現役の愛煙家である.今から7 年前,当時はまだ仕事も現役であった60 歳のK さんは狭心症のため通院中の循環器内科医院より息切れのため紹介された.狭心症はカテーテルを用いた治療により改善,症状もなく安定しており,それでは説明4 COPD の章